そして、数日後。カナンたちもルーキウス王国に帰ることになった。迎えに来たのはセレストだ。ほぼ二週間ぶりの再会だ。
「楽しまれましたか?」
「ああ。まあな」
 白鳳のことはリナリアにも口止めはしてある。知られたら、いろいろまずいし、心配をかけてしまう。それに白鳳を発見した時の状況は別荘を抜け出して、森に遊びに行っていたのだ。きっと、お説教が待っている。
「後でリナリア様にも聞きますから、ね。抜け出したりはしてませんね?!」
「あ、ああ」
 リナリアにはあとで編物の毛糸だま作りを手伝う約束をしているから、口止めは大丈夫なはずだ。
「じゃあ、お着替えになってください」
「ああ」
 王宮で着る服を出してもらって、カナンは今来ている服の上着を脱いだ。
「カナン様、虫に刺されました?」
「え?」
「ほら、ここ……」
 手鏡とクローゼットを使い、首筋の見えにくいところを移してもらうと、そこにはわずかに赤くなった痣があった。
(あ、あの時か……)
 あの時のわずかな痛みの正体に気づき、カナンは真っ赤になる。
「どうかしましたか? カナン様?」
「何でもない!」
 カナンの態度をいぶかしむセレストに対し、半ば八つ当たりのようにカナンはセレストの追求を振り破った。


「さて、坊ちゃんは気づいているかな?」
 その頃、旅の空の下で、白鳳はくすくすと笑っている。
「こういう借りの返し方もありでしょう?」
 遠い空の下にいるはずの少年に話し掛けるように呟いて、白鳳は鮮やかに微笑んだ。



……FIN

えーと、コピー本からの再録です。私の書く白カナはこんな感じ。セレストには内緒の関係…。美味しいですよね?

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