一度達したカナンの体は当然ながら、ぐったりと弛緩する。薬により快楽に敏感になっている体なら、なおさらのこと。
「ひゃ、っ……」
 だが、そんなカナンへの愛撫の手が緩むことはなく。快楽の証を吐き出して力を失っているカナンの中心を清めるように、セレストの口内に含まれる。
「や、だめ…っ……」
 ゆるゆるとしたカナンの抵抗を気にすることもなくセレストはカナン自身を愛撫し続ける。やがて、カナンの奥所をセレストの指が忍び込んでいった。
「あっ……」
 濡れた指がカナンの奥を探り始める。いつもよりも性急に探り、奥からの快楽を引きずり出すようなその動きにカナンは身悶えるしかなくて。
「くぅ…ん……」
 やがて指の本数が増やされ、それはばらばらにカナンの中を動きまわる。中をかき乱されると同時に頭の中をもかき乱されているようで。異物感は最初からなかった。むしろ、望んで引き込もうとする動きですらある。それが媚薬のためだなんて、カナンにはわからなかった。ただ、自分の身体がおかしくなっていることに戸惑って。それ以上に身体は快楽を求めていて。そんなカナンの姿にセレストは満足げに笑みを浮かべると、すでに覚えてしまっているカナンの快楽のポイントを指で強くえぐった。
「うゎ…あぁ、っ……!!」
 また達してしまう、と思ったとたんに、カナン自身の根元は強くセレストの手に封じられてしまい、達することを許されない状態になってしまう。
「やだぁ…だめ……」
 追い立てるだけ追い立てて、逃げ場を失わされてしまったカナンのいつもの強気な青い光はない。快楽のために、強く潤んでいる。
「や、なんで……」
「カナン様ばかり、ずるいでしょう?」
 そう言って、カナンの太ももには既に熱くなっているセレスト自身を押し当てられていて。先走りに濡れているそれはカナンの太ももをも濡らす。
「あ……」
 いつもより、熱い気がする。セレストも媚薬を飲んでいたのだと言うことを改めて思い出す。なのに、自分ばかりが乱されて。ずるいなんて、言葉を言い出すだなんて。

「僕がずるいなら…お前だって、早く……」
「欲しいですか?」
「馬鹿者……」
 この期に及んで、こんなことを言い出すだなんて。けれど、身体はもう限界だ。早く、一つになりたい。セレストの熱で溶かされたい。
「も、早く……」
 それだけを口にするのが精一杯。精一杯の矜持。焦らされていることが辛い。カナンの精一杯の言葉にセレストは満足げに笑うと、カナンの中にゆっくりと押し入っていった。
「あ、あぁ……」
 いつもなら、慣らされていても、感じずに入られない違和感はない。むしろ、セレストと一つになることで更なる大きな快楽を感じて。
「もっと…動いて……」
 いつもなら、口にしない言葉。口に出来るはずもない言葉が簡単に滑り落ちる。
「ええ、カナン様……」
 引き込まれるようなカナンの中の動きにセレストもあっけなく自分を手放しそうな感覚を覚える。けれど、まだ、だ。より強い快楽をカナンから引き出したい。そして、カナンにもこの快楽を共有して欲しい。強く、弱く。その中をむさぼる。何て、浅ましく。何て、原始的で。何て、魅惑的な……。
「カナン様、そろそろ……」
「も、僕も……」
 やがて訪れるクライマックス。けれど、それは終わりではなくて、まだ、序章。
「あ、あぁーー!!!」
「くっ……!」
 互いの熱を吐き出しても、まだ飽き足らない。余韻のキスを交わしてしまえば、もうそこで余韻は余韻でなくなる。
「もっと、セレスト……」
「ええ、カナン様……」
 夜は終わらないままに過ぎてゆく……。



 それでも、朝はやってくる。カーテン越しに入り込んでくる光をぼんやりと二人は享受する。
「起きれない……」
「……非番でよかったです」
 ぐったりとベッドに沈み込んでいるカナンと何とか着替え終えたセレスト。互いに疲れが残っている。薬が切れるまで、ひたすらに互いをむさぼりあい、ほとんど眠れていない。
「とりあえず、今日のお勉強はお休みにしたいと言っておきますから……」
「頼んだぞ……」
「あと、私も少し部屋で休みます。仮眠を取ったら、午後からまた来ますので……」
 本当は非番だけれども、こういうことは二人の共同責任だ。セレストだけ休むわけにもいかない。
「しかし、あれをカレーに入れていたら、どうなっていたんだろうな……」
「……考えたくありません」
 そう言い会って、二人でくすくす笑いあう。
「まぁ、今度は薬なしでじっくりしよう」
「ですから、そういうことは〜」
 カナンの言葉に微苦笑を浮かべるけれど、やっぱりこういうことは薬なんかに頼るよりも、自分に正直な方がずっといい。
「とりあえず、カナン様、休んでくださいね」
「おまえも、な」
 互いに気遣い合う言葉を掛け合って、チュッと音を立てる可愛いキス。何となく、昨日に自分たちの下ことよりも気恥ずかしい気がしたけれども、これはこれでいいんじゃないか…と思うカナンであった。

やっと終わった……。…セレストがやっぱりイケイケになる……。すみません、イケイケじゃないセレストって、どうやって
書くんでしょう? 黒従者を書いてみたいけれど、イケイケになりそうで怖い……


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