手の平の宇宙
静かな空間。あなたはそこにいる。私だけのあなた。そう…他には何もいらないの。そう…ここは楽園。あなたと私だけが存在する。
「レヴィアス」
あなたの名を呼ぶと、振り返る。ここには何もない。だから、あなたの瞳が映すのも私一人だけ。これがどれだけ嬉しいことなの
か…
きっとあなたは判らないのだけれど。
「キスして……」
塞がれる唇。触れあう温もり。安心できる。あなたがここにいることを確認できる。私だけのあなた。誰にもあなたを傷つけさせない。
私が守ってあげる。だから、あなたは私だけを見つめていて。私だけを愛して。
「アンジェリーク……」
あなたが私の名を呼んでくれる。嬉しい。ちゃんと、『私』を見ていてくれるって、思えるの。あなたが愛した人でなく、私自身を。
「ん……」
あなたの指先が、私を暴いて行く。私自身の本当の姿を。欲望も、感情も、そのまま。奇麗なだけの私じゃない、本当の私。
「や…ん……」
暴かれるのは、本当は恥ずかしい。いつまでも慣れない。でも…あなたを感じたい。あなたを独占しているのが、私なことを確認したい。
私は愚か? でもね…恋をすると、愚かになる。それは…イケナイこと?
私は天使なんかじゃない。ただのオンナだわ。あなたに出会って、そうなったの。でも…後悔してない。あなたに出会わなかったら、
綺麗事しか知らなかったのよ。それって、すごく恐いこと。それがイケナイこと? じゃあ、どうして出会わせたの? 運命だから…なんて、
そんな言葉で片づけられるはずがない。だって…出会ってしまったもの。こんなに愛しい人。私の…大切な人。
普段の私は宇宙の女王と呼ばれている。宇宙を導く存在。それが私。親友と二人、頑張っている。
「まだ、生命が現れないね……」
データを見て、苛立たしげにレイチェルが爪を噛む。
「せっかく、アナタがあの戦いから無事に帰った来たって言うのに」
あの戦い…それは、私があなたと出会うきっかけのこと。レイチェルは何も知らない。私が固く皆様に口止めしたから。皆…私のことを
哀れだと思ってくれているから、頷いてくれたわ。そう…あの方たちから見れば、私は愚かで哀れなオンナ。宇宙を救う存在でありながら、
敵である男に恋をした……。
でも…あの人たちは知らないの。あなたとの戦いに決着が着いたとき、あなたと私は二人きりにしてもらった。
何もかも捨ててもいいって言っているのに、あなたは一人消えようとした。だから、私はあなたを私の中に閉じ込めたの。あなたを消え
させないために、あなたを私のものにするために……。だって…あなたは私を選んだからこそ、消滅を望んだんだから。私を穢さない
ために……。
バカね…あなた。ちゃんと人の話を聞いてないんだもの。私が、あなたを選んだのよ。私がそう簡単にあなたを手放せるはずがないわ。
『傲慢な女王だな……』
あなたはそう苦笑したけれど……。あの空間は悪くなかったみたいね。何もない空間だからこそ、見つめ直せるって言ってくれたの。
それからあとは、それこそ女優並の演技力を見せた。目の前で愛しい人を失ったオンナの顔。女王とオンナの狭間で揺れる哀れな
少女。皆、気遣ってくれたわ。ただ、私と同じ名前の女王は、何も言わなかった。気づいているのか、気づいていないのか。でも…いい
でしょう、これくらいは? 彼女に何をいう権利があるんだろう。私が来なければ、この宇宙は危なかったんだし。でも、彼女が私を
呼んだから、あなたと出会えたのよね。そう言う意味では、感謝しないと。
静かな闇の空間。衣擦れの音が聞こえるだけ。けれど、知っている? 確かな命のリズムに包まれていること。ここもまた、宇宙。私の
中にある宇宙。そこにあなたはいる。まだ…その存在を表わすことはできないけれど。いずれ、瞬間が流れて、あの戦いのことを知る
者がいなくなるまでは。そうすれば…私はアナタを堂々と側に置けるもの。ううん、本当はそんなことじゃないの。あなたを独り占めして
おきたいだけ。私って…わがまま?
私の中の宇宙。私の身体に存在する宇宙。私とあなたで作り上げた一つの命。それがこの宇宙の最初の人類。私の中に確かに存在
するあなた。あなたの器。
「愛しているわ…レヴィアス……」
楽園の中で…あの人の腕に抱かれるときが至福の瞬間。
「……」
靴も、ストッキングも脱がされたつま先に、そっと口づけられる。何だか、不思議な恍惚感。そのまま、口づけは足を滑ってゆく。女王に
敬意を表わす…なんてね。くすぐったいだけ。けれど、あなたがしてくれることだから。嬉しいけれど。
ねえ…私を見て。私を愛して。今以上に、もっと強く。激しく抱きしめて。あなたのために私は女王でいる。ねぇ…気づいてる? 私を
ここまで溺れさせたあなたは私という宇宙を支配している皇帝なのよ。そう言ったら、あなたはどんな顔をするのかしら?
緩やかに壊れてゆく時間。心。確かに存在するあなただけがあればいい。そのために私は女王でいる。聖女の振りをする。
でも、そんな私でもあなたは愛してくれるんでしょう?
傲慢な、女王様アンジェです。これも一種の監禁(爆笑) まぁ、こんな話書くの私くらいですしね。裏テーマは「爪先にキス」です。
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