天使の策略


 でも、 なにも、判らなくなって。
 熱を追うことだけに、もう、必死だった……。
 子供じみた我侭で拗ねて、呆れられて。
 余裕なんて」」」」ずるい。
 言えばいつだって「夢中にさせてやるよ」って言い返されて。
 これ以上、どうやってあなたに夢中になればいいんだろう?



 すべてを知り尽くした指の動き。それから必要以上に与えられる快楽。
「……ん、っはぁ」
 形の良い唇が悪戯を仕掛ける。焦れったさを与えるみたいに、突起に触れてゆく。
「あぁん、もぉ、いやぁ」
 焦れったくて気が狂いそう。
 羞恥、なんて言葉はとっくの昔に忘れてしまった。
 アリオスが望むままに乱れて」」」」」饗宴を繰り返している。
「ふーん、……いや、ねぇ」
「……あっ!」
 突起を口に含んだまま、アリオスが可笑しそうに呟いた。その刺激にアンジェリークの体が跳ねる。
「俺に抱かれるのが、嫌か、アンジェ?」
「ふ……っ、あ…違……んんっ」
「じゃあ、なにが『いや』なんだ?」
 言えよ。
 楽しげに、けれど有無を言わせない口調。
 真摯にアンジェリークの瞳を覗き込んだその瞬間、アリオスは愛撫の手を止めてしまった。
 与えられない刺激。
 肌から消える温もり。
 答えるまではすべてがお預けで。
 目の端に滲んだ涙になど、アリオスは知らん顔だ。
「アンジェリーク?」
 促すように呼び掛けられて、アンジェリークは途方に暮れた顔でアリオスを見上げた。
「嫌ならやめてやるぜ?」
 意地悪い言葉。けれど額に張りついた髪を掻き上げてくれる手は優しくて。
「……嫌じゃ……ないわ」
 素直に否定の言葉を口にして、アンジェリークはアリオスの首にするりと腕を回した。
「もっと……触れていて」
 唇を寄せて、キス。
「焦らさないで……アリオスでいっぱいにして、わたしのなか」
 他のものが入りこむ隙間なんかいらない。
「なにも判らなくなるくらい、もっと……抱いて?」
「……大胆だな」
 驚いたように目を見張ったアリオスが、苦笑しながらそう言った。
「アリオス。あなたが好き」
「ああ。じゃあ、お望みどおり、お前の知らないもう一人のお前を引き出してやるよ、今夜は」
 低く囁かれたと思った瞬間、アンジェリークは貪るように口づけられていた。
「ん……はぁ……んっ」
 触れるキスと、深いキスと、角度をかえて何度も口づけられて」」」」」酔う。
 飲み込みきれなかったものが、顎を伝う。その感触すらが刺激。
 ぴちゃり、と淫猥な音が静寂を侵す。
「アリオスっ」
 誘うように腰を揺らめかせながら、アンジェリークはアリオスの首筋に唇を寄せた。
「本当に、今夜は大胆だな」
 小さく笑った気配。
 背中を撫でるようにはい回る手と、秘部にのばされる指。
 何度もアリオスを受け入れていたそこは、すんなりとアリオスの指を迎え入れた。
「……あ……ぁ」
 アンジェリークの唇が歓喜の吐息を洩らす。
 くちゅり、くちゅり、と静寂を乱す音が響く。
「はっ、…ぁ……アリ……オス」
 ねだるように口づけ、抱きつく。
 ねぇ、足りない。
 どうしてか、今夜は乱されたいの。
 乱れたいの。
」」」」」早く一番深い場所に……きて。
 熱っぽく耳元で囁けば、アリオスが苦笑したようだった。
「わがまま」
 しかたねぇな。そう呟いたアリオスが、アンジェリークの体を抱き上げた。
「え」」」」? あ、きゃあっ!?」
 深く貫かれた。
「……アリオス?」
 今までしたことがない体位。
 不安になってアリオスの瞳を見つめれば、アンジェリークを安心させるような微笑が返された。
「もっと乱れたいんだろ? だったら乱れてみろよ」
「……あの……?」
「動いてみな、自分で」
 ぺろり、とアンジェリークの肩を舐めて。
「俺で満たされたいんだろ? 他にはなにもいらないくらいに。だったら、自分から俺を求めてみろ。
 狂うくらい」」」」」」」」
「アリオスっ」
 ためらいは一瞬だけ。
 誰よりも大事な人で満たされる快楽。それを得るために、アンジェリークは艶やかな表情で踊り狂った。


 子供っぽい独占欲だけで、満足できない。
 天使のような少女のままでいたくない。
 あなたの『女』でいるために。
 子供の我侭で拗ねるなんて、もう嫌。
 恋人らしい独占欲で、拗ねたい。
 キスするときに目を開けたまま、なんて余裕。その特権はもうあなただけのものじゃないのよ?
 わたしはあなたで満たされて。
 あなたはわたしに満たされる。
 いつまでも受け身でなんていられない。
 だから乱れて」」」」そのうちあなたを乱してあげるから。
 あなたがわたしを、あなたに夢中にさせたみたいに。今度はわたしが、あなたをわたしに夢中にさせてあげるわ。
 だって、わたしばかり余裕がないのは、ずるいじゃないの。
 あなたから、余裕を奪ってあげる。
 天使の殻を投げ捨てて、ひとりの女の表情であなたを翻弄するくらい大胆になってみせるから。


「だから、覚悟してね?」


 穏やかな眠りに落ちているアリオスの横顔に、アンジェリークは宣戦布告をするように囁いた。


                   END

 まどか様からのいただきもの。とうとう彼女は書いてくれました。絶対上手いやん。はぁ、うちのコレットもこれ
くらいにならなきゃ……。ねぇ、うちのコレットと交換しない? でも、そっちのコレットが嫌がるか。うちのアリオスとだと。