ぷちしゅー
はむはむはむ。一生懸命に食べている様子は可愛いと言えば可愛いのだが、どこか複雑な心境で見守る視線。
どちらかと言うと、生暖かい視線と言うべきかも知れない。
「美味いか、アンジェリーク?」
「♪」
自分の顔の半分はあるかと思うシュークリームをレヴィアスに支えてもらって一心不乱に食べている。その様子は
どこかこっけいでありながら、楽しくもある。
「情けない……」
キーファーの呟きをこの場にいる誰もが聞こえない振りをした。
事の発端はジョヴァンニが買ってきたお土産からだった。パイ生地を使ったさくさくのシュー皮とバニラビーンズが
たっぷり使われたカスタードクリームが入ったシュークリーム。
「わぁ」
「お茶を入れますね」
…とここまでは良かった。
「大きいねぇ〜」
「うん。特製らしいし?」
腕の中に小さな天使を抱えながら、ルノーが箱を覗き込む。
「あ、アンジェの顔半分くらい……?」
小さな天使とシュークリームとを見比べて、ルノーがどうしようかと言う顔をする。その意味を察して、ジョヴァンニは
小さな袋を差し出した。
「そっちの天使様にはちゃんとプチシュークリームがあるから」
「用意がいいですね……」
とりあえず、お茶を入れてきたユージィンが軽く感心したように言うと、ジョヴァンニは肩を竦めた。
「だってさ、このおちびさんが食べられないものを買ったら、レヴィアス様になんていわれるか」
「レヴィアス様はお優しいから……」
「ああ、そうだね。君もルノーも思考がそっちだもんね……」
同意を求めた自分が馬鹿だったとジョヴァンニは苦笑した。
「とりあえず、お茶にしようか。残りの連中の分は冷蔵庫に入れておいて……」
美味しいお菓子とお茶があれば、そこからティータイムは始まる。ゆったりとした時間が流れ始めるはずだった。そう、
レヴィアスが来るまでは。
「アンジェはいるか?」
「あ、レヴィアス様」
抱えていた仕事に一段落ついたらしいレヴィアスが小さな天使を求めてやってくる。
「♪」
シュークリームを食べている最中なのて、飛んではいけず、ぶんぶんと手を振るアンジェリーク。
「何を食べているのだ?」
「シュ、シュークリームです。ジョヴァンニが買ってきてくれて。れ、レヴィアス様も食べます?」
「いや。我は……」
断ろうとした、レヴィアスの視線が不意にアンジェリークに移る。
「どうして、アンジェリークだけが小さいのなのだ?」
「……それは」
プチシュークリームを食べているアンジェリークを抱き上げて、ジョヴァンニに視線を移すと、ジョヴァンニは困った
ように肩を竦めた。
「このシュークリーム。結構大きいんで。そのおちびさんの手には負えないんでね」
持たせて見る?と、一つ目のプチシュークリームを食べ終えた小さな天使の手にシュークリームを手渡すと、
「〜」
と、重みによたよたし始める。
「なるほど」
「わかっていただいたのなら」
そう言って、アンジェリークの手からシュークリームを取り上げようとしたジョヴァンニの手はレヴィアスによって阻め
られた。
「え?」
「重いから、食べられないのは可哀想だ。我が食べさせるとしよう」
そう宣言するなり、ソファに腰掛けて、シュークリームを手にして、アンジェリークに食べさせ始めた。
「れ、レヴィアス様は優しいなぁ……」
「ええ。本当に……」
いやみでも何でもなく、本当に感動しているルノーとユージィンの会話に、ジョヴァンニが何かが違うものを感じた
のは言うまでもない。
そして、今に至る。幸せそうにシュークリームにかぶりつく小さな天使とそれ以上に幸せそうな表情で天使を見守る
青年。幸せな光景だとは思いつつ、何か違うものを感じるのもまた事実で。
(今度から、シュークリームは買ってこないことにしよう)
とりあえず、ジョヴァンニがそう思ったことは言うまでもない。
一体、どこまでこのシュークリームワールドは広がるのか……。
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