1/365な日
誕生日を祝うたびに何を祝うのかが不思議だ…そう言うと、たいがいの人間はセイランを気の毒そうに見つめる。その
視線がまたセイランには理解しがたいものであった。
誕生日と言うのは…365日あるうちの中のただの一日である。セイランにとってはただの通過点に過ぎない。だから、
それを祝う意味が分からない。それだけのことである。
『でも…セイラン様が生まれてこなければ、セイラン様の作品は生まれてこなかったわけですし。だから…セイラン様が
生まれたことをお祝いしたいんじゃないですか?』
そんなセイランの疑問に女王候補である天使の名を持つ少女はそう言って、セイランの疑問に自分なりの解釈を告げ
てくれた。
『それに…セイラン様本人にお会いできて良かったから、お祝いしたいって気持ちもあるんですよ』
それは自己満足ではないか…セイランがそう言うと、少女は困ったように笑っていた。
『そうですね…自己満足かも知れないですね。でも…私は大好きな人にお祝いしてもらえるのなら嬉しいです。セイラン
様はそうではないんですか?』
屈託のない少女の言葉に今度はセイランが困ってしまう。そんなふうに考えたことなどなかったから。
『セイラン様だって…そう思う時が来る日があるんじゃないですか? …なんて、生意気言っちゃいましたね』
悪戯っぽく言ってのけたその表情は天使と言うより小悪魔のようで。それでいて、眩しくて。少しだけ…跳ねる心臓。しな
やかで奔放な思考の少女はその瞬間、確かにセイランの中の何かを変えたのだ。
「まさか、僕にそう思う時が来るなんて…ね……」
呟いて、セイランはくすくす笑う。目の前にカンバスには天使の肖像画。空想画とも言うべきか。優しい眼差しの天使が
映し出されている。『セイラン様が嫌でなければ…お祝いしますよ』
その言葉の意味がどういう意味なのか…図りかねるけれど。負けてばかりではいられない。彼のプライドは高いのだ。
「君にもそう思わせてみせるさ…僕はね……」
ふと、窓の外を見るとラッピングされた箱を抱えた天使が学芸館に向かって走ってきている。その様子を見て、セイランの
瞳が緩む。好きな人に祝ってもらえるのなら嬉しい…そう言ったのは確かに天使の方だから。今、こんなに嬉しく思っている
自分をセイランは認めざるを得ないから。
「僕はこう見えても、負けず嫌いだからね…覚悟しとくんだね。アンジェリーク……」
顔をポーカーフェイスに切り替えて、そ知らぬ振りで迎え入れよう。そうしたら…天使はどんな反応をするだろうか。それ
でも…祝ってくれるだろううとは思うけれど。
足音が部屋の前で止まる。そして…コンコン、とノックの音。
「どうぞ。入って」
ガチャリと扉が開く。そして…満面の笑顔の天使が入ってくる。たった一つの言葉とともに……。
……HAPPY BIRTHDAY!
もとネタは奥井亜紀さんの“Wind Climbinb〜風に遊ばれて”と言う曲。好きだったのよ。この曲。セイランって、あんまり
誕生日とか言う、イベントごと好きじゃなさそうですけど、まぁ、アンジェが相手だとねぇ。
|| <Going my Angel> ||