未成年の主張
静かな夜。夜空を見上げると、宇宙の危機とは思えぬほどの穏やかさ。だが、確実に皇帝を 名乗る宇宙の
侵略者はこの宇宙を蝕んでいる。
「…ったく、大丈夫なんだろうな」
武器を改造する手を休めて、ゼフェルは呟く。思いをはせるのはこの宇宙を司る天使。侵略 者の手に落ちて
しまった彼女はそれでも、この宇宙の為に祈りを捧げているはずだ。それを考 えると、彼の中に苦々しい何か
がこみ上げてくる。
「ったく、らしくねぇなあ…」
今の自分にできることは一刻も早くこの宇宙を救いに来たもう一人の天使と共にこの宇宙を 救うことだから。
「水でも、飲むか…」
気分転換にと部屋を出る。アリオスの部屋の前を通りかかった瞬間、ゼフェルは足を止めた。 部屋の中から
潜むような声が聞こえてきたのだ。
(なんだ?)
元々、旅の剣士というだけでそれ以外のことは誰も知らない。アンジェリークの命の恩人と いうことで、信頼を
得ているようなものだ。彼に何かあるのかもしれないと重い、ゼフェルは 扉に耳を当て、中の様子をうかがう。
「ゃ…」
だが、聞こえてきたのは押し殺したような少女の声。思わず、ゼフェルは硬直する。
(アンジェリークがいるのか? 何やってんだ、あいつら…)
夜もかなり遅い時間。そんな時間に異性の部屋にいるということは…。
「や、痛い…」
「我慢してろ、すぐによくなる…。俺を信じてろ…」
「で…でも、ん!」
ベッドがきしむ音まで聞こえてくる。
(ちょ、ちょっと、待てよ!)
人の恋路に口出しする趣味はないが、今は宇宙の危機である。そんな時にと思うのである。 まして、アンジェ
リークは新宇宙の女王。手を出していいわけない。
「あ、ん…」
「ほら、身体は正直だな。気持ちいいんだろ?」
揶揄するような青年の口調。
「うん…」
微かな肯定の声。
「力、抜いてろ。もっとしてやるから」
ふっと笑いながらのアリオスの言葉。そこでゼフェルの中の何かが一本切れる音がした。
「何やってんだよ、お前ら!」
思わず、ノックもせずに勢いよく扉を開けてしまう。だが、部屋の中でゼフェルが見た光
景は…。
「ゼフェル様?」
ベッドに横たわり、きょとんと来訪者を見つめる少女。そして、ニヤニヤと笑いを浮かべ、 少女の傍らに座る
青年。少女は戦いの衣装ではなく、大き目のシャツにスパッツ姿。服装は 二人とも一糸たりとも乱れていない。
「よ、どうした、ぼうや?」
余裕綽々といったアリオスの態度。だが、ゼフェルもここで引くことは出来ない。
「なんで、おめーの部屋にアンジェがいんだよ」
「なんでって…なぁ。」
互いに顔を見合わせるアリオスとアンジェリーク。
「ベッドで横になってたら、両足がつって動けなくなって…」
「で、俺が見かけて、マッサージしてたわけだ。こいつ、かなり凝ってるぜ。ほら」
そう言って、アリオスがアンジェリークの背中のツボのひとつを押すと、
「痛い!」
と、少女が悲鳴を上げる。
「ここが悪いってことは、内臓も弱ってんだよ。ついでだから、ここもしてやるよ」
「やだ、痛いってば!」
「我慢してろ、そのうち、良くなる」
じたばた暴れるアンジェリークを押さえ込んでマッサージを始めるアリオスである。
「…」
複雑そうな表情でその様子を見つめるゼフェルである。どうやら、自分の考えは誤解で あったらしい。それは
それで良かったとは思う。
「どうした、坊や? そう言えば、さっきはずいぶん慌てていたよな。」
意地の悪さがあいまった揶揄するような口調。ゼフェルにこの余裕があるはずもなくて。
「何をしてると思ったんだ?」
「う…」
しばしの沈黙。そして…
「馬鹿野郎!」
入ってきたときと同じく、勢いよく飛び出していってしまうのであった。
「どうしたのかしら、ゼフェル様…」
何もわかっていないアンジェリークである。
「ちょっとからかいすぎたかもな…」
「?」
きょとんとするアンジェリーク。だが、アリオスは相変わらず余裕綽々の揶揄する笑みを 浮かべているだけ
だった。
そして、その後。アリオスとゼフェルの新密度がかなり落ちたのは言うまでもない…
このペーパーを読んだ人はみんな、「アリオス、わかってていってるんですね」でした。友人の霧夜光ちゃんなどは
「親密度0になったの間違いでしょ」というし…。
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