鮮やかな真紅が広がる森。秋の光景。眠れる大地の惑星は紅葉とスパで有名なのだという。
「たかが、落葉する前に色が変わるだけなのにな……」
 そう呟いて、すっかり色づいた楓を見上げる。装備を整えるために、この街に滞在することになったアンジェリークたちはそれ
ぞれに買い物などをしており、単独行動がしやすい。今もまた、城から戻ってきたところだ。

「アリオス、こんなところにいたの?」
「……!」
 驚いて、振り返れば、そこには栗色の髪の天使の姿。声をかけられるまで気づかなかった自分に戸惑う。まるで…そこにいる
のが当然のような、空気のように自然な感覚。

「あ…驚かせちゃった?」
「……いや。買い物はすんだのか?」
「ええ。色々買ったわ」
 腕の中に抱えた袋はかなりのもので、ずり落ちないように必死で持っている。
「貸せよ」
「え?」
 戸惑う隙に袋を取り上げる。
「持ってくれるの?」
「袋を抱えたまま、転ばれると厄介だしな」
「〜私、そこまでトロくない」
 むっとしたように見上げてくる。勝ち気な瞳。その瞳は常に前を映していて。それが危険だ…と心のどこかで訴えてくる。この
瞳に取り込まれたら…きっと……。

 決して重なる道ではない。それがわかっているのに。どうして、魅入られずにはいられないのか。
「でも、紅葉って綺麗よねぇ……」
 うっとりと木々を見上げるアンジェリーク。
「落ちちまえば、ただのゴミだぜ」
「もう…風情がないわね。こんな可愛い女の子と一緒なんだから、楽しみなさいよ」
「自分で言うか、それを……」
 呆れたように肩を竦めるポーズをとってみれば、くすくすくす…アンジェリークが笑う。
「まぁ、いいじゃない。今は今を楽しみましょう。今だけなんだし」
「……ああ、そうだな」
 用がすめば、この惑星を後にする。そうしたら、もう訪れることもないだろう。旅の合間の一幕…といったところか。
(今は今を…か……)
 決して重なることのない二つの道。だが、それでも。今、こうして二人ここにいる。それもまた、現実。
「ねぇ…ゆっくり宿に戻ろう」
「ああ……」
 それは仮初めの時間。やがて訪れる時は痛みしかもたらさないけれど。それでも…この時間を振り払えない。ならば…浸って
みるのも言いのかも知れない。偽りの時間でも…この天使の笑顔が見られるのなら……。

13000番を踏まれた玻璃様からのリクエスト、『紅葉を見に行くアリオス・アンジェ』の話です。おかしいなぁ。コメディを書くはずだった
のに。まぁ、コメディはそのうちに……。


<贈り物の部屋>