パンドラの箱
「おい、いい加減に機嫌を直せよ」
「……」
話し掛けても、返事すらしない。会話とキャッチボールはよく似ている、としみじみ思ってしまう。どちらも投げ掛けるだけ
では成立しない。受け止める相手があって初めて成り立つのだ。
「俺が悪かったんだろ? 謝るから、いつまでも膨れっ面はやめるよ。河豚より酷いぜ」
「……」
ピキッと空気が凍り付く。機嫌はますます悪化してゆく模様。流石にからかいが過ぎたとアリオスが思ったところで過ぎた
時間は戻らない。
元々、この膠着状態の原因とて何気ない会話の中でアリオスがアンジェリークをからかったことから始まったのだ。アリ
オスの些細な言動に一々反応して見せるアンジェリークが可愛くて、つい…と言ったとこで納得する相手であるなら、苦労は
しないが、惚れもしない。
「アンジェ」
「……」
「アンジェちゃん」
「……」
「アンジェリーク」
「……」
どんなに呼び掛けても、ものの見事に無視を決め込んでいて、返事すらしない。
「いい加減にしろよ! いくら、温厚な俺でもキレるぞ! だから、ガキだってんだ」
自称温厚ではあるが、彼が温厚なら、世間の半分以上は温厚である。そんなことを思いながら、アンジェリークはチラリ、
とアリオスに視線を向けて、口を開いた。
「温厚な大人なら、拗ねた子供にも心が広い筈よね」
「お前な……」
再び、クッションを抱き締めてふてくされるアンジェリークにアリオスは今度こそ大きく溜息をつく。
「俺が悪かったし、謝るべきところは謝る。だがな、そうやって、いつまでもふてくされているんなら、いつまでも俺にガキ扱い
されても仕方ねえだろ?」
「……」
流石にその言葉は効いたのか、渋々といった風情でありながら、クッションを離して、アリオスと向き合う
「アリオスは大人だから、余裕があるのよ」
「おまえな……」
何を言うのかと思えば、そんなことだとは。彼等の間の年齢差はどうやっても覆しようもないことだ。努力でどうにかなるもの
でもない。
「どうせ、くだらないことって思ってるでしょ? ずるいわ。私だけが必死みたいなんだもん……」
大人であるアリオスに釣り合いたくて、精一杯の背伸びをしても、軽くあしらわれることもしばしば。まるで、恋をしているのは
自分だけみたいだ。
「おまえはそのままでいいだろ? 自然に綺麗になりつつあるんだしな」
「え?」
さりげなく言われたその言葉に少しの戸惑い。聞いたことのないせりふ、だ。
「信じろよ」
さりげない口調で、けれど声には真摯な色が混じっていて。駄目押しされる。
「///!」
途端に真っ赤になるアンジェリークをアリオスは自分の腕の中に閉じ込めてしまう。
「あ、アリオス?」
「身体で信じさせてやろうか?」
「バ、馬鹿〜」
身をよじって腕から逃れようとするが、男の力にかなうはずはなく。腕の中に閉じ込められたまま。
「余裕なんてねぇよ。何時だって、欲しいと思ってんのに」
「……///」
強引に上向かせられて、唇を塞がれる。いつもは優しいキスから始まるのに、いきなり上級な口付けの先例を浴びてしまう。
「んぅ……」
強引に口内に入ってきたものは容赦なく蹂躙を始める。アンジェリークの身体から力が奪い取られてゆく。
「あ……」
気が付けば、アリオスに抱き上げられている。
「ちょ、ちょっと〜」
「なんだよ。余裕がないとこを見たいんだろ?」
「議論がすれ違ってる〜」
「黙ってろって」
抗議の声はそのまま、アリオスの唇に飲み込まれて。そのままベッドまで、運び込まれる。
「あ、やだ……」
服の隙間から入り込んでくるアリオスの手は強引に。それでいて確実にアンジェリークの感じる場所をまさぐっている。
「や、んッ!」
「何だよ、聞かせろよ? ほら」
たくし上げられた服の下で、色ずつ淡い蕾にアリオスは唇を落とす。もう片方の蕾はアリオスの手で愛されて。確実にアンジェ
リークを追い詰めようとしている。
「はぁ、っ…ん――」
「いい声だよな。もっと、聞かせろよ。俺だけが欲しがってるなんて不公平だろ?」
「意地悪……!」
いつもはこんな事を言わないのに。何時だって、アンジェリークを気持ちよくしてくれて。気遣ってくれるのに。
「意地悪? 余裕がないってとこが見たいんだろ? 何時だっておまえが欲しくてたまらない。俺だけのものにしたいってな。
ほら」
「きゃ!」
腕を取られ、既に熱くなっているものに触れさせられる。
「おまえだから、こうなるんだぜ?」
「〜」
潤んだ瞳でにらみつける今の表情すらも愛しくてたまらない。その存在全てがアリオスを誘惑する。存在自体が甘い媚薬の
ようだ。
「余裕がある振りでもしなきゃ、我慢できねぇからな」
「あ、ちょっと?」
途端にスカートをたくし上げられてしまう。そのまま下着の中に指先がもぐりこむ。
「ふぅん、濡れてる、な……」
「バ、馬鹿!」
「いいじゃねぇか。それだけ、感じてる証拠だろ? ほら?」
「あ、んん!」
クチュリ…と、淫らな水音をわざとたてられて。身体の熱は急激に加速してゆく。
「あ、やぁ――!」
「ほら、いっちまえよ」
その言葉と共にアリオスは指を一層激しく動かして。そのまま、上りつめさせてしまう。
「――!!」
一気に追い立てられ、頭の中が真っ白になる。苦しげに息をつ気、そのまま意識を失いそうになるアンジェリークの意識を
つなぎとめるために口付ける。
「ん……」
「まだ、だろ?」
そう言って、押し当てられる熱いもの。アリオスの情熱の証。その事に気づき、アンジェリークは身を竦ませる。いつもなら、
アンジェリークが追いついてくるのを待っていてくれるのに。容赦をしてくれなくて。
「え、ちょっと待って……!」
「いや、待てねぇよ」
「やぁ――!」
熱い情熱が入り込んできたかと思うと、そのままアンジェリークの中で動き出す。
「あ、駄目…苦し……」
「嘘付けよ。こんなに喜んでるだろ?」
とがったままの胸の蕾に歯を立てると大きく身体をのけぞらせる。こんなことは知らない。いつもなら、アリオスはもっと
……。
「足りねぇよ、まだまだな……」
全身に口付けて、所有印をつけて。まだまだ、足りない。いくら愛したところで止まるはずはない。
余裕があるなんて、錯覚もいいところ。自分だけのものにしたいという暗い感情をどれだけごまかしていたと思うのか。
まだ、知らないままでよかったのに。
(言い出したのはこいつだからな……)
そう自分に理由づけて。泣きじゃくり、許しを請う少女を愛してゆく。美しい彼だけのは何するために。時間はまだまだある。
夜は始まったばかりなのだ。
「愛してるぜ、アンジェリーク……」
幾度目かの頂点に達する時に囁かれたその言葉はもはやアンジェリークには届かなかったけれど……。
アリオス限定キリ番、47472番を踏まれたゆうな様からのリクエスト。アリオス・アンジェのあまあまHを召さしたはずの創作……。
ごめんなさい……。タイトルの別名、「やぶへび」、もしくは「キジも鳴かずば撃たれまい」、。そんなものです。