ゆがんだ王国

「おいで、おだんご」
 優しい声に呼ばれた。
 エスコートをするために差し出された、手。
 それにどきどきと胸を高鳴らせながら、うさぎは自らの掌を預けた。
 思いのほか温かな体温に、うさぎの鼓動は早くなる。
「もしかしておだんご、ぼくにどきどきしてる?」
 揶揄かうように言いながら、はるかは楽しげに笑った。
 人気のない深夜の公園。
 月光に照らし出された、噴水。
 天空にある淡い金色を、水が映し出す。
 そして雫は、やはり金色の光を反射させ、きらきらと輝いている。
 幻想的な瞬間。
 夢幻のような、一瞬。
 そこにいる、現実。
 ふたりきり。
 秘密の逢瀬。
「……はるかさんはどきどきしないの?」
 揶揄かわれたことに拗ねて、うさぎは唇を尖らせて言った。
 すると、はるかは心外そうに目を見開いて、わざとらしく大げさに溜息をついてみせた。
「僕がおだんごにどきどきしないわけ、ない」
「……。だったら。どきどきしているなら、はるかさん、わたしをからかったりしないで。冗談に紛らわせてしまわないで?」
 うさぎはそう言って、重ねた手に力を込めた。
 はるかがふっと眼を細めて、うさぎの手を握り返す。
「ごめん」
 ぽつりとはるかは呟いた。
「会えるのが久しぶりだったから、ちょっと浮かれた」
 自嘲気味に言ったはるかは、うさぎの手を引いて歩き出した。
 静かな雨音に似た、噴水の音。
 その傍に、導くように。
 噴水の縁石に腰掛け、はるかは立ったままのうさぎを見上げた。
 うさぎは黙ったまま、はるかと視線を絡めている。
 はるかが繋いだままのうさぎの手に、そっと唇を寄せた。
 うさぎはそっと目を伏せる。
 神聖な儀式のようだと思いながら。
「おだんご」
 厳かな声に呼ばれて、うさぎはそっと目を開いた。
 真摯な、そして熱っぽいはるかの瞳がうさぎを見つめていた。
「おだんご」
「なぁに、はるかさん?」
 再度呼ばれて、うさぎは微笑を返す。
 甘えを含んだはるかの声に、包み込むような声を返した。
「もし……。もしも、僕が……うさぎを攫いたいって言ったら、ついて来る?」
 全部を捨てて?
 苦しそうに言ったはるかに、うさぎは微笑んだ。
 最高の笑顔を浮かべて、頷いた。
 無言のまま上体を傾け、そしてはるかの行動を真似るように、繋いだままの指先に唇で触れる。
 誓いの口づけの代わりだよと、悪戯っぽく笑いながら、小さく、小さく囁いて。
「今すぐでなくてもいいから。いつか……はるかさんにだけ縛り付けられることのできる場所に、わたしを攫ってね」
「必ず、攫う。罪も罰も、うさぎを手に入れることの喜びの前では、少しも怖いとは思わない」
 キングへの背信すらたいしたことではないと、きっぱりと言い切って、はるかはうさぎの額に唇を落とした。


……FIN 

まどかさん、大好き〜ヽ(^o^)丿 ……以上(笑) マジでうちのうさぎをさらってよ。待ってるから。