正しい言葉の使い方
ある日の曜日の庭園。謎の商人こと、チャーリーが出す露店にお客様。
「何や、メルちゃん」
メルは真剣な眼差しでチャーリーを見上げてくる。
「あのね、商人さん。メル、前からずっと不思議に思ってることがあって。商人さんなら、教えてくれるかなって……」
「何や……? 俺で答えられることなら、言うてみ」
「うん……」
手を前でもじもじさせている仕種は小動物のようで可愛い。
「あのね…『枚挙に暇(いとま)がない』って言葉あるでしょ?」
「ああ…あるけど……」
何となく、この後の展開が判ってくる。
「あれ、どうして、『まいきょ』のなかに『い』と『ま』があるのに、そんなこと言うの?」
「あのな、メルちゃん……」
言葉の意味自体をまず理解していないのだろう。どう説明しようかと、チャーリーが考えを巡らせると……。
「簡単なことだよ。僕が答えてあげよう」
「セイランはん……」
訪れたセイランに何となく嫌な予感がするのは彼のせいなのか。
「メル、その言葉の意味をまず理解しなきゃ。枚挙っていうのはいうのは省略せずに次々に物事を並べていくことなんだ」
「うん」
思ったよりまともな説明そうでチャーリーは内心ホッとする。だが、それだけで住むような人物ではないことを彼は失念していた。
「でも、あまりにも次々に物事を並べすぎて、『い』と『ま』があるのを忘れてしまうくらいに忙しいってことなんだよ」
(……おい!)
突っ込みを入れようとするが、その前にメルは感動の視線をセイランに向けていて。どうしようもない。
「わぁ、セイランさん、ありがとう。これでメル、少しは賢くなったかな……」
無邪気に喜ぶのに水を差すのばどうかと思うのだ。エルンストにさりげなくフォローを頼もうと思うチャーリーである。
「セイランはん、さりげなく嘘つくの得意ですな……」
「さぁ?」
しれっとした顔のセイランにこれ以上何も言う気も起きないチャーリーであった。
だから、あたしはセイランのこと嫌いじゃないって。メルちゃんも嫌いじゃないよ。でも、どうして、可愛いままのあなたでいてくれなかったの。
シクシク……。成長した彼にまだ納得が行かない私……。
<聖地お笑い劇場>