日溜りの天使


 出窓に置かれた小さな椅子。それはそこに腰掛けていた。いる、という表現はおかしいかもしれないが、
確かな存在感で日溜まりに包まれていたから。

 ことの起こりは少し前のこと。聖地に現れた小さな少女。それは新しい女王アンジェリークの心の迷いが
作ったものだった。自分を想う守護聖たちの気持ちにアンジェリークの迷いは消え、少女はいるべき場所、
アンジェリークの心の中に帰った。残されたのは少女が持っていたテディベア。

 それから紆余曲折を経て、手作りの椅子にちょこんと腰掛けたテディベアは本ばかりのこの部屋の第二の
住人となっていた。

 
 穏やかな日の曜日。地の守護聖であるルヴァは例にもれず休日は本の整理にと忙しい。いや、忙しいはず
…だった。いつものごとく整理していたら、つい開いてしまい、そのまま読みふけるというパターンである。

 トントン。窓をたたく音にルヴァはようやく現実に戻る。
「はい?」
 窓の方を見ると、そこには珍しい人の姿。
「クラヴィス……?」
 慌てて、ルヴァは窓を開ける。
「あぁ、こんにちは。クラヴィス。何か御用ですか?」
「別に…近くを通りかかっただけだ……。」
 無気力なこの人が外に出ることは滅多になくて、珍しいことのはずなのだが、ルヴァはにこにこと応対する。
「はぁ……。そうですか? よろしければ、中に入ってください。お茶をご馳走しますよ。」
「……。」
 ルヴァに手招きされて、クラヴィスはそれに従う。
「じゃ、しばらく待っててくださいね。」
 ルヴァに勧められた椅子に腰掛け、ふと窓辺を見るクラヴィス。小さな手作りの椅子に座ったテディベア。
すっかりこの部屋の住人と化しているようだ。

「あぁ…お待たせしました。」
「別に…かまわぬ……。」
 ルヴァに出された紅茶をクラヴィスは口に運ぶ。言葉を切り出すタイミングを図ろうとする。
「ルヴァ……。」
 クラヴィスが口を開こうとすると、ルヴァは困ったように苦笑する。
「あなたにも気遣ってもらってるみたいですね……。」

「気づいていたのか……?」
 出花を挫かれて、少し戸惑うクラヴィスである。もっとも、表情には出ないが。
「まあ…私はゼフェルに鈍いとか言われてますけど……。ここのところ、みんながいろいろとしてくれるんですよ
……。このテディベアの椅子もマルセルやランディ、ゼフェルが作ってくれたんですよ……。」
「私の場合は外に滅多にでないのに…か?」

 クラヴィスの言葉にルヴァは慌てて首を振る。
「いや…そんなことは言ってませんよ。」
「冗談だ。」
 ルヴァのそんな様子にクラヴィスはフッと笑みを漏らす。こういうところがルヴァのルヴァたるゆえんなのだと
思う。

「私は…こういう人間ですから……。みんなをやきもきさせてしまうようですね……。」
「別にかまわぬ。あれこれうるさいのよりはずっといい。」
 暗に誰かのことを指しているのかはわかるので、それ以上はルヴァも追求しない。少し、恐いから。
「でも…大丈夫ですよ……。私は幸福ですから……。」
 屈託なくルヴァは笑う。
「私は無器用な人間ですから……。想いをどうにかできるとは思ってません。ただ…想い続けるだけです……。」
「……。」
「彼女の笑顔が見られる…それだけでいいんです。それは今までもそうでした。これからもそうです。」
 少し照れくさいですね…と照れ笑いをするルヴァ。彼が想いを寄せた少女は今は宇宙の女王への道を選んだ。
けれど、それを誰よりも祝福したのはルヴァだった。天使は空にあるから天使なのだ…と。

「だから…私は大丈夫なんですよ。」
「ああ…そうだったな……。」
 クラヴィスは苦笑する。ルヴァは自分ではない。生き方も、性格も、そして、愛し方すらも違う。自分とは同じ道を
行くはずがないのだ。どちらが良くて、どちらが悪いとかいうのではない。ただ、愛し方の違いだけの話。

 日溜まりの中にいるテディベア。棚に飾らず、あえて太陽のある場所に置いて。日溜まりの中で気持ち良さそうで。
それは元の持ち主そのものなのかもしれない。そして、包み込む太陽はルヴァ自身。何となく、そんな気がする。

「ああ…お茶のおかわりを入れましょうか……?」
「ああ……。」
 にこにことルヴァがお茶のおかわりを入れる。そして…日溜まりの中で静かで穏やかな時間が過ぎていった……。


“君色想い”の続編…ですね。私のルヴァ様の基本なのです。 基本的にCDのルヴァ様が一番好きなのです。
だから、目標とするのはCDのルヴァ様なのです。


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