Hand Made
「やるよ」
日の曜日。アンジェリークの壊れた腕時計を修理したゼフェルは、修理した腕時計と共に小さな小箱をアンジェリークに
手渡した。中には手作りのイアリング。小さな羽のデザイン。小さなピンクの石をあしらっている。
「わぁ、可愛い♪」
「気に入ったか?」
「はい♪」
嬉しそうにイヤリングを見つめるアンジェリークに満足そうにゼフェルも笑う。
「俺が作ったんだぜ」
「すごいんですね、ゼフェル様って」
キラキラした瞳でゼフェルを見つめてくる。まるで、小さな子供のよう。
「魔法使いの手ですね」
「馬鹿、何言ってんだ」
そう言いながらも、悪い気はしない。この天使を巡っては何かとライバルが多いのだから。
「でも…私の分だけなんですか?」
「は?」
「ロザリアの分はないんですか?」
「あ……」
もう一人の女王候補の名を出され、ゼフェルは口をつぐむ。この少女にだけ、特別に作ったものだ。もう一人の女王
候補の事など、考えていなかった。
「私一人だけじゃ、不公平です……」
「あいつの趣味に合うかどうか、わかんねーだろ」
「それはそうですけど、せっかくのゼフェル様の手作りなんですよ……」
出来れば、二人お揃いのものがほしい。けれど、ゼフェルが困っているのはわかる。
「すみません、我が侭言っちゃいましたね……」
シュン…とうつむいてしまった少女にゼフェルは慌てて、首を振る。
「んなことねーよ。おめーがそう言うんなら、つくってやってもいいんだぜ?」
「え、いいんですか?」
パッと顔を輝かせる少女を現金だと思う。だが、悲しい顔を自分のせいでさせたくない。自分でも情けない話だと思う
のだが、そう思ってしまうのだから、仕方ない。
「ありがとうございます。ゼフェル様♪」
嬉しそうに笑うこの天使の笑顔を今この瞬間だけでも、独占できるのだ。そして、自分に対する少女の株も上がるはず。
恋する青少年は健気なのである。
そして、更に数日後。ロザリアの手元にはアンジェリークと石が色違いのイアリング。ロザリアの石はブルーのもの。
「ゼフェル様にロザリアとおそろいのものを作っていただいたの」
ニコニコと話す金の髪の親友とイアリングをロザリアは見比べる。
「私たちに最初からお揃いだったの?」
「ううん。私にって作ってくれたの。でも、ロザリアの分がなきゃ、不公平だと思って、お願いしたら作っていただいたの」
「そう……」
案の定…と、内心で思いながら、けっして顔には出さない。それが彼女のプライド。
「お揃いは嫌? 私、ロザリアとお揃いが良いからって、お願いしたんだけど……」
不安そうに尋ねるアンジェリークにロザリアは表情を緩ませる。
「馬鹿ね。そんな事あるわけないじゃない」
「そう、よかった」
嬉しそうに笑う親友が願う事なら、叶えてやりたいのが人の情けというものである。ロザリアもこの金色の髪の天使には
弱いのだから。
(でも、ゼフェル様とは一度ちゃんと話し合わないとね……)
完璧なる女王候補であるロザリアをお高くとまってるだの、女版ジュリアスだのと評する彼が積極的にこんな事をする
はずがない。アンジェリークのお願いだから…である。
(私の目が光ってるうちはこの子に手は出させないんだから……)
強く決意するロザリアの真意になど気づくこともなく、アンジェリークはイアリングをつけてみたりしている。
「ねぇ、似合う?」
キラキラした瞳で尋ねてくるその表情はとても可愛くて。
「とても似合っていてよ。そうだわ、今度、このイアリングに合わせて、お揃いのワンピースを作らない?」
「えっ、それって、素敵〜」
無邪気に喜んでいるアンジェリーク。これで当分の関心は自分に向けられると確信するロザリア。だが、油断はならない。
敵はゼフェルだけではないのだ。
そうして、今日もまた金色の髪の天使を巡る攻防は守護聖とロザリアの間で繰り広げられているのであった。
一応はデュエットネタ…になるのかな。ロザリアは今日も我が道を行くのでありました。
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