帰るべき場所


「嬢ちゃんはやっぱり帰りたいのか?」
「うん」
 シオンの問いにきっぱりとメイは答える。もちろん、判りきった答え、だ。異世界から過って召喚 されたのだ。帰りたくない
筈がない。

「何? あたしを帰したくない、とか」
 冗談めかした言葉を投げて、メイは笑う。一見、人懐こい、悪く言うと、馴れ馴れしいこの少女は 恐ろしいほどにしたたかで
物怖じしない。この少女には隠し事は通じない、そう思わせるほどに。

「いや、帰るべき場所ってのはどういうもんかなってな……」
 もちろん、故郷を離れ、クラインで暮らす者もいるのだけれど。自分の意思で帰ることのできない 場所というものがシオンには
理解できないのだ。

「何言ってんの。あんたにだって家はあって、実家はあるんでしょ? ちゃんと帰る場所があるじゃ ない。贅沢言わないの」
 窘めるようなメイの言葉。確かに実家はあるし、クラインには親兄弟だけではなく、親戚もいる。
メイから見れば、帰れる場所であるのだろう。
 だが、それはシオンにとっては捨てた場所だ。親友として、側近の部下として、王太子であるセイ リオスと運命を共にすると
誓ったのだ。その前に立ち塞がるのなら、親兄弟でさえも切り捨てる、そう
決めているのだから。
「あの家に帰る場所はないさ。帰りたいとも思わないしな」
「じゃあ、作ればいいじゃない」
「嬢ちゃん?」
 あっさりと簡単に告げられた言葉にはさすがのシオンも不意をつかれた。
「帰りたいって。そう思える場所が帰るべき場所じゃない」
「そうなのか……?」
「そうじゃない?」
 当たり前のように、メイは笑う。
「でも、あんたの場合、いろ色々な相手に手を出してるし、探すのが大変かもね〜」
「じゃ、嬢ちゃんがなるか?」
「あたしが?」
 きょとん、とメイが瞳を丸くするのに、シオンは苦笑した。
「なんで、あたし?」
「嬢ちゃんと一緒だと退屈しないし、な」
「でも、それって、あんたがあたしの帰る場所にならないと無理だよ」
 自分には帰る場所があるのだ。シオンの申し出は無理に近い。
「簡単だろ? 嬢ちゃんが俺に惚れちまえばいい。お買い得だぜ、俺は」
 自信たっぷりに言ってのけたシオンにメイは唖然とした顔を見せて、不敵に笑う。
「やれるものなら、ね」
 との言葉を添えて。それが何よりもメイらしくて、シオンは笑ってしまうしかなかった。

こう言う話は好きかも。これはいつ会ったときだっけ? 冬込み? ファンタのオンリー? 覚えてないや(笑)