Eternal Happiness


 月が真上に上がる時間でも、その部屋の明かりはついていた。机の上には膨大の資料。宇宙を育成し、発展
させるため為のものだ。この宇宙はまだ出来てしばらくしかたっておらず、みずみずしいばかりの活気に溢れて
いた。だが、その不安定さが伴う。

「あんな細っこい身体で、あいつもよくやるよな」
 パサリ…と机の上に資料を置いて、アリオスはため息をつく。かつては侵略者として、栗色の神の女王の故郷を
襲った存在。そして、今はその魂を受け入れた天使を補佐し、守ると言う存在になっている。彼のした罪は許される
べきことではない。だが、栗色の髪の女王も、その親友である補佐官もその罪を問うことはしなかった。

『いくら悔いても、時間は戻ってこないわ。大切なのはこれから何をするのか、だと思うの』
 そう告げた少女の瞳はとても鮮やかで。かなわない、とアリオスは思った。ならば、自分にできることするだけだ。
人口が増え、活気に溢れていることの裏返しは、少しでもバランスが崩れると危ういこと。それを支える為の存在が
その天使ならば、自分は彼女を支え、守ること。それが、『これから何をするのか』と言う少女の言葉に対する答え
だと思ったのだ。

 コンコン。軽いノックの音。こんな時間に彼のもとを訪れるのはただ一人しかいない。
「入ってこいよ、アンジェリーク」
 振り返らずに、声だけをかけると、遠慮がちに扉を開く気配。
「あの、寝てた…?」
 そっと聞いてくるその声もどこか遠慮がちである。アリオスは机に向かっているのだから、起きていることなどわかる
だろうに。

「何、遠慮してんだよ。今更…」
そう言って、振り返った瞬間、アリオスの言葉は途切れてしまった。
「あの、変かしら…」
「…」
 何も答えてくれないアリオスにアンジェリークは不安げな表情を隠せない。
「あの、似合わない? それなら、はっきり言ってね」
「い、いや。よくにあってる。驚いただけだ」

 アンジェリークが身にまとっていたのは純白のドレス。レースとシルクで作られ、シンプルながら、少女の愛らしさを
引き立てるもの。そして、包み込むようなベール。その衣装が連想させるものは一つしかない。
「今日、アリオスの誕生日でしょう。だから、プレゼントを考えたの。でも、貴方はあまりものには興味なさそうだし。それ

なら、一生分のプレゼントにしようって、思ったの」
「一生分って、お前…」
「アリオスのお嫁さんになりたいって…」
 其処まで言うと、ウエディングドレス姿の少女はうつむいてしまう。一方、言われた方のアリオスは戸惑ったまま。
いらないんなら、いい…
 悲しげな声で去ろうとするアンジェリークをアリオスは慌てて引きとめる。

「誰もいらないなんて、言ってないだろう。ただ、驚いただけだ」
「本当に?」
「嘘を言ってどうするんだ」
 ぶっきらぼうな言葉。だけど、その分重みがあって。アンジェリークはコクリ…と頷く。
「お前の方が先になっちまったな」
「何のこと?」
 机の引出しから出されたのはベルベットの小さな箱。
「これ…」
 開けてみると、プラチナのシンプルなリング。ペアのもの。アンジェリークはアリオスを見上げる。
「俺がお前に相応しい男になれたと思ったら、渡すつもりだった。この宇宙ごとお前を支えられるくらいに…な。お返しに、
俺をやるよ。一生分のお返しだな」
その言葉と共に軽く掠めるようなキスが唇に落ちてくる。その瞬間、アンジェリークの瞳から、水晶の雫がこぼれ出す。
 
「おい、泣くなよ…」
 もう2度と泣かせないと誓った天使の涙にアリオスは戸惑ってしまう。そっと涙をぬぐってやる。
「ただ一人のおまえにだけ誓う。俺が俺である限り、お前がお前である限り、お前を愛する…と」
「私も、貴方にだけ誓います…。貴方を永久に愛することを…」
 互いの指に誓いのリングを交わす。そして、永久を誓う口付け…。幸福と祝福を互いのために…。

「ハネムーンに連れてってやるよ」
 ふわりとアンジェリークを抱き上げて、アリオスはバルコニーに出る。
「どこに行くの?」
「そうだな、オーロラでも見に行くか」
 それは遠い約束。あの時はかなえることが出来なかった。
「うん」
 アリオスの首に手を回し、アンジェリークは頷く。アリオスはいとおしそうに腕の中の天使に視線を向けると、バルコニー
から飛び降り、転移の魔法で消えてしまう。

  その後の二人の行方は月だけが知っていた…。



かなり遅れたけど、誕生日創作です。イエーイ、やけです。いいの、その代わり、ハネムーンも書いたし。思いついたのが
誕生日当日だったんだもん。


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