僕の天使に手を出すな


 新宇宙に初めての人間としての生命が生まれ、それを待っていたかのように、次々に人間の生命が生まれて来た。その
報告を受けた新宇宙の女王とその補佐官の故郷である宇宙の金の髪の女王は守護聖に祝いの品を届けるように命じた。
炎の守護聖オスカーと鋼の守護聖ゼフェルである。

「で、なんで、俺が……」
「文句は言うな。陛下からの命令だ。まぁ、俺としては可愛いお嬢ちゃんたちに久々に会えるのは楽しみだがな」
 そう、あの金の髪の女王ににっこりと笑顔でお願いという名の命令を受けて、逆らえるはずがない。オスカーはともかく、
ゼフェルはぶっきらぼうで素直でいない割に、金の髪の女王が女王試験を受けた時から甘かったのだ。それを知っている
オスカーは内心で笑っているのである。


 女王が住む宮殿では栗色の髪の女王、アンジェリークとレイチェルが二人を待ちうけていた。
「ようこそ。オスカー様、ゼフェル様」
 自分たちを迎える二人の少女にまずオスカーが歩み出る。
「お久しぶりです。女王陛下、そして、補佐官殿。このたびは女王陛下の名代により、この炎の守護聖オスカーと鋼の守護聖
ゼフェルが遣わされました。お2人とも、お元気そうで何よりです」

 恭しく礼をするオスカーにくすぐったそうな表情をする。
「よぅ。うちの陛下の命令だから、来てやったぜ」
 らしいゼフェルの言葉に2人ともクスクス笑う。オスカーはそんなゼフェルにため息をつく。
「コラ、TPOを考えろ。陛下の御前だぞ」
「あんたに言われたかないね」
「困った奴だな……」
 やれやれとさじを投げたような表情をするオスカー。言っても、聞く相手でないことは元々承知しているし。
「ま、そういうわけだ。堅苦しいのは抜きにして……」
 口調を変えて、唇の端に笑みを浮かべ、アンジェリークの手を取る。
「久しぶりにお嬢ちゃんに会えたしな。挨拶がわりってことで」
 そう言って、アンジェリークの手の甲にオスカーが口づけようとすると…。
 パシッ! と手を刎ねられる。
「え……」
 突然の出来事にきょとんとするオスカー。
「あーあ。出てきちゃったね。ちゃんと待ってるように言ってたのに」
 レイチェルが肩を竦める。
「何だ、このガキ……」
 突然現れたのは小さな男の子。年のころは4、5歳といったところ。銀色の髪と金と緑の瞳が印象的である。
「アンジェに触るな」
 そう告げると、少年はギュッとアンジェリークの手を握る。
「この子供って……」
 オスカーの問いにアンジェリークは頷く。
「この宇宙で最初に生まれた人間の生命、アリオスです。普段は王立研究院の施設で育てているんですが、今日お二人が
来られるので、お目通りしようと連れてきたんです」

 自分の手を離そうとしないアリオスにアンジェリークは困ったような笑みを浮かべる。アリオスの方はきつい視線でオスカー
を見ている。

「なぁ、普段は王立研究院で育ててるって……。あいつ、アンジェリークから離れたがらねぇんじゃねぇのか」
 コソコソとレイチェルに尋ねるゼフェル。オスカーへの視線は完全に不信と嫉妬が混じっていて。子供の見せる表情では
ない。

「そうなんですよ。だから、一人前になって、アンジェを守れるくらいにならなきゃ傍にいる資格がないって言い
聞かせたら、納得しました。こういう公式行事にはなるべく参加させるようにはしてるんですよ」

「だろうなぁ……」
 悲しい別れで終わった恋である。天使が彼を愛したようにかつての彼も天使を愛したのだろう。だから、一度自分の人生に
幕を下ろし、新しい自分として生まれ変わることを望んだのだろうとゼフェルは思う。その結果が今のアリオスなのかもしれ
ない。だが、あまりにも独占欲が強い。

「アリオス。わざわざ来てくださったお客様に失礼でしょう」
「別に来てくれって俺は頼んでない」
「あのね〜」
 これでは保母さんと保育園児の会話である。思わずオスカーは笑い出してしまう。
「すみません、オスカー様」
 困ったような表情をするアンジェリークに対し、アリオスはしれっとしたものである。
「勝手にアンジェに触るから悪い」
 そう言うと、アリオスは有無を言わさず、アンジェの手の甲に口づける。
「あ、アリオス?」
 予想もつかない行動をするアリオスに戸惑うアンジェリークをよそにアリオスは不敵な笑みをオスカーとゼフェルに向ける。
「アンジェは俺のだからな」
 その宣言とも言える言葉にあっけに取られる二人である。だが、同時に同じことを考えてしまう。
(末恐ろしい……。今でこれなら、将来は……)
 チラリとレイチェルを見つめると、肩を竦めている様子。どうやら、さじは投げきっているらしい。
小さなナイトと彼が守護すべき天使の来たるべき未来を案じて、2人は苦笑するしかなかった。

3333番を取ったMIKIKO様のリクエストで、守護聖とアンジェを取り合うアリオスです。普段のうちの彼は余裕綽々の人なので
小さい彼だったら…と思って。でも、この話、書いててはまる。あたし、ショタじゃないのに〜。

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