男たちの哀


「ねぇ、商人さん。メル、不思議に思ってることがあるんだけど……」
「何や、メルちゃん。俺で答えられることやったら、答えるで」
 口ではこう言いながら、内心でまたか…と思ってしまう商人さんこと、チャーリーである。それでも、表面はにこにこと笑顔。商売
人の鑑と言えよう。

「あのね…『雪山讃歌』って歌があるでしょ? あの歌の人たちはどうして街に住めないの」
「……あぁ」
 小学校で習ったこともあるあの曲にチャーリーは苦笑する。確かにあの『俺たちゃ 街には住めないからに』という歌詞を額面
通りそのままに受けとめる子供は数多い。

「あのな、メルちゃん……」
 メルに分かり易いように説明を始めようとするチャーリー。だが……。
「簡単なことだよ。僕が教えてあげよう」
「あ、セイランさん」
 突然、現れた感性の教官に嬉しそうに駆け寄るメルとは正反対に、複雑な表情になるチャーリー。この人が出てくると、ろくな
ことを言わないのは百も承知しているから。

「いいかい、メル。冬の雪山は雪崩とか、吹雪が起こるから危険なんだ。そんな危険なところにもかかわらず、彼らはそこにいる」
「うん……」
 熱心に聞き入っているメル。手に汗を握ってすらいる。「それは町には住めないくらいに悪いことをしたからさ。だから、警察の
来ない山で暮らしているんだよ」

「え〜。恐い歌なんだ……」
「だから、滅多に歌うんじゃないよ」
「はぁい!」
 力強く頷くメルにチャーリーは頭が痛くなる。あの曲は山を愛する男たちの歌である。街には住めないくらいに、山を愛した男
たちの歌なのだ。

(ヴィクトールさんがここにいればなぁ……)
 登山が好きだと言う彼なら、きっとうまく説明してくれたのに。セイランにも対抗できるだろう。決して、自分ではしないところが
何となく、情けない。

「ありがとう、セイランさん」
 疑問が解けて、嬉しそうに去ってゆくメル。
「あそこまで素直だと、いっそすがすがしいね」
 しれっとした顔のセイラン。悪気は全然ないらしい。
(なんでこの人が教官なんやろう……)
 こんな奔放すぎる彼を教官と仰がざるを得ない二人の女王候補に思いっきり同情してしまうチャーリー。
 そして、今日も我が道をゆくセイランなのであった。

あの曲聴いていれば、誰もが思うことだと思います。うちのセイランはこの路線で行った方が言いそうです……。いいんかいな……。

<聖地お笑い劇場>