Welcome to Paradice


   眩しく輝く太陽。白い珊瑚礁。コバルトブルーと鮮やかなマリンブルーの境目の水平線。

  『新しくできた惑星なんだけど。自然を残した形で開発を進めたいの。そう言うわけで、二人で視察行っておいでよ』
  と、有無を言わせぬ女王補佐官レイチェルの言葉に従って、女王アンジェリークと女王の補佐役であり、彼女を守護する
  剣士であるアリオスはその惑星を訪れた。二人が滞在できるように自家発電装置が用意されたコテージ以外は何もない。
  自然のまま手付かずに残された土地である。

  「あの島を思い出すな……」
   呟いて、アリオスは苦笑する。今の彼ではない、以前の彼。海で遭難し、見知らぬ土地に流れ着いたと思ったあの時。
  秘めていた過去の一部を天使に語った。今はもう、そんなことすら思い出として、かたづけらている自分自身。

  「ま、悪くはないか」
   まだ生まれて間もない、人の手が入っていない楽園とも言うべき場所。視察と言うより、ここの所、根をつめすぎであった
    アンジェリークを休ませようと補佐官からのアイデアに、アリオスが乗った形になった。

  「しかし、水着に着替えるくらいで、どうして女ってのは時間がかかるんだ……」
   着いた途端、泳ぎたいとはしゃいでいたのは少女である。アリオスの方はすっかり支度が出来ていて、コテージの前で  
  待っている状態なのである。

   ガチャ。コテージのドアが開く音にアリオスはあきれたように振り返る。大きめのパーカーを羽織った少女が俯いて出てくる。
  「あの…ごめんなさい。待たせちゃって……」
  「謝るくらいなら、早くしろよ……」
  「……ごめんなさい」
   ますます声が小さくなる少女にアリオスは溜め息を吐く。あまりきついことを言うと、泣かれてしまう。この天使に泣かれ  
  るのは心臓に悪い。大人しすぎて、つい自分の中に貯め込んでしまうのだから。

  「怒ってねぇよ。ほら」
   強引にその手をとって歩き出す。戸惑いながらも、嬉しそうに笑うアンジェリーク。アリオスの手は大きくて。とても安心  
  できるから。

  「何笑ってんだ、バカ……」
   そう言いながらも、アリオスの頬にはいつしか笑みが浮かんでいたのであった。

  「で、海に入るのに。それを着たままかよ」
   なかなかパーカーを脱ごうとしないアンジェリークにアリオスはあきれた口調を隠さない。アンジェリークは困ったような
  顔のまま。

  「だって…その、恥ずかしくて……」
   真っ赤になって俯くその仕種はとても愛らしい。無意識に誘われている気がするが、この大人しい少女にそんな芸当が
  出来るわけがないのも知っているので、手出しもできない。

  「バカ、今更水着ぐらいで恥ずかしがってんじぇねえよ。それとも、今からベッドに直行してやろうか? そっちの方がいい  
  ってんなら、つきあってやるぜ」

   クスクス笑いながら、耳元で囁くと少女の顔はますます紅潮する。
  「や…そんな……」
    微かに耳朶を噛まれ、ピクンと少女の身体が跳ねる。
  「じゃあ、水着ぐらいで恥ずかしがるな」
   グイッと少女を引き寄せて、パーカーに手をかける。あっけなく、パーカーは少女の身体から奪われる。
  「や、やだ〜」
   「……おい」
   アリオスですら、一瞬固まってしまった。少女がまとっていたパーカーの下は意外にもビキニであったから。ピンクの
  チェックのそれは華奢な少女に良く似合っていた。似合ってはいたのだが、アリオスにしてみれば意外な姿。てっきり、  
  この少女は清楚なワンピースだと思いこんでいたから。

  「あのね、ちゃんと可愛いワンピースをバッグに入れてたのよ。でも、ここに来てバッグをあけたら、これしかなくて……」
   この姿は自分の意思でないと訴える姿から判断して、その言葉は嘘ではない。とすると、こういうことをする人物は彼の
  知る中では一人である。

  「お前一人で準備したのか?」
  「ううん、レイチェルに手伝ったもらったけど」
  「……」
    ああやっぱりと思ってしまう。本当に有能な補佐官殿である。ありがたすぎて、思わず両手を合わせて、拝みたくなる。
  「じゃあ、着替えるのが遅かったのはこのせいか」
  「うん、探したけど。これしかなくって……」
   自分の身体を抱え込むように座り込んでしまったアンジェリークの瞳には涙が浮かんでいる。よほど恥ずかしいので
  あろう。

  「どうせ、ビキニなんて似合わないし……」
   クスン…と落ち込んだまま浮上してこない少女にアリオスは苦笑する。
  「誰が似合わないって言った。ちゃんと見せてみろよ」
  「や……」
   ぶんぶんと首を降るアンジェリーク。その仕種はとても可愛いが、このままでは埒があかない。
  「仕方ねえな」
   アリオスの瞳が悪戯に光る。嫌な予感がしてあとずさろうとするが、アリオスの方が行動は早かった。
  グイッとアンジェリークの腕を掴むと、そのまま自分のほうに引き寄せる。
  「きゃっ……」
   無理やり立ちあがらされて、戸惑うアンジェリーク。華奢な肢体が鮮やかな太陽の下で晒される。華奢ではあるが、
  つくべきところはそれなりについている。水着姿とはいえ、いつもは女王の正装で覆われている部分が陽光の下で見る
  ことができるその肢体は、月明かりの下で見るのとは趣きが違ってそれはそれで新鮮さがある。

   「可愛いぜ。アンジェ」
   チュッとおでこにキスを贈る。
  「本当に?」
   不安げに見上げる少女の耳元にもキスを送る。ビクンと跳ねる身体を押さえつけて、そっと囁きかける。
  「ああ。何なら、その証をここで見せてやろうか?」
   フッと息を吹きかけると、耳が、頬が真っ赤に染まる。
  「い、いい!」
  「なんだよ、遠慮するなよ」
   逃げようとする少女を難なく抑えて、唇をふさいでしまう。
  「ん…ぅ……」
   昼間のキスにしては濃厚すぎるそれに逃げようとするアンジェリークだが、後頭部を押さえこまれてはそれもかなわ
  なくて。ただ、アリオスに流されてしまう。

  「ふ、ぅ……」
   唇が離れた頃にはすっかり力が入らなくて。アリオスに支えてもらっている始末だ。
  「どうする?」
  「泳ぎたい……」
    流されながらも、せっかく海に来たのだという思いが強くて。アリオスは苦笑する。
   「御了承いたしました。女王陛下」
   そっと抱き上げて、波打ち際まで運んでやる。
  「もう、恥ずかしくないだろ?」
  「アリオスだから、かな」
   真っ赤になりながらも、そう告げるアンジェリーク。
  「良くわかってんじゃねぇか」
   天使の言葉に満足そうに笑うと、アリオスはアンジェリークの額に御褒美のキスを落とした。


4000番を取られたなちゅ様に捧げた作品です。温和アンジェとアリオスのバカンスということでした。温和アンジェって、難しい。
裏もねぇ、書きたかったのよう……。やる気はあるんだけど、長くなるしねぇ……。←誰か、こいつを止めてやれ


<贈り物の部屋>