潤い、愛


「アリオス、誕生日おめでとう」
 満面の笑顔で告げられる言葉に戸惑いをアリオスは未だに隠せない。たかだか、三百六十五分の一日、だ。前の誕生日から、三百六十五日たっただけだというのに。そういうと、アンジェリークは笑って、言うのだ。
「あら、だって。アリオスの生まれた日だからじゃない」
 何でもないことのように。けれど、その笑顔に心が温まるのも事実で。今まで、知ることのなかった感情だからかも、知れない。
「俺が生まれた日がなんで、だよ?」
「……だって、アリオスが生まれてきてくれなきゃ出会えなかったのよ?」
 そう言って、アンジェリークはアリオスを抱きしめる。
「生まれてこなきゃ良かったって、思うときがたくさんあったんだよね? 前のアリオスには。でもね、アリオスはもう前のアリオスじゃないでしょ? アリオスが生まれてきたことをこんなに嬉しいと思ってる私がいるんだもん」
「アンジェリーク……」
「エリスさんだって、そうだったと思う。アリオスが生まれてきてくれなきゃ、出会えなかった。今の私はいなかったの。アリオスが大好きで、幸福な私が……。だから、生まれてきてくれて、ありがとう……」
 その柔らかな暖かさに涙が出そうになる。どうして、この目の前の恋人はこんなことを何気なくいえるのだろう。アリオスがほしかった、向けてほしかった愛情を埋めるように注ぎ込んでくる。乾いた砂が水を吸い込むようにようにその愛情を求めているのに、それをすべて潤すかのように。
「だから、誕生日、おめでとう……」
「……ああ」
 自分が生まれてきたことに意味があるのなら、きっとこの目の前の少女に出会えたこと、だ。泣きたいほどの愛しさをごまかすかのように、アリオスはアンジェリークを強く抱きしめ返した。



誕生日ねたはいつだってシリアスになっちゃいますねw

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