「ふふ……」 ほんのり赤く染まった頬に潤んだ瞳。気怠げな吐息。ベッドの中なら、鴨ねぎ状態ではあるが、あいにく今は日も高い。 (どうしろってんだ……) ついつい内心で悪態をつくアリオスである。 アリオス〜」 「はいはい」 呼び掛けに答えると、フニャッと笑ってアンジェリークはアリオスに抱き着く。 「この程度で酔うってことはよほど弱いんだな……」 「レオナード様。そうおっしゃっても、レオナード様の責任ですよ」 すっかり酔っ払っている女王の姿にあきれたような口調のレオナードにエンジュは容赦なくツッコミを入れる。バレンタインにとレオナードがブランデーケーキを焼いて、エンジュに贈ったのだが(もちろん、エンジュもレオナードにチョコレートを贈っている)、たまたま青の中庭でお茶会をしようとしていた女王とレイチェルと出会って。おすそ分けという形で、ブランデーケーキが振舞われた。そこまではよかったのだが、ケーキを一切れ食べたアンジェリークが見事に酔っ払ってしまったのだ。 「だいたい、お前がバクバク食うから、陛下もつられて食うんだろうが」 「バクバクって……。二切れしか食べてませんよ。人聞きが悪いです。そもそも、お酒を聞かせすぎなんですよ」 「あ〜? 俺様特製のブランデーケーキに文句あるわけ?」 喧々囂々と言い合う二人にレイチェルはパンパンと手をうち、会話を打ち切らせた。 「二人とも、落ち着いて。陛下がここまでお酒に弱いってコトはワタシも知らなかったし。誰に責任があるってわけじゃないよ」 「レイチェル様」 流石にヒートアップしていたのが、落ち着いてくる。伊達に女王補佐官をしているわけではない。 「アリオス、そういうわけで。今日は仕事にならないから、陛下のお相手よろしく〜」 と、あっさりと丸投げもできてしまう。仕事のできる女は違うのだ。 「じゃあ、お片付け手伝います〜」 「おい、エンジュ。あとで部屋に来い。コーヒー入れてやる」 …と、エンジュもレオナードもとっとと退散して。一応、カップルに気を使った形にはしたのだ。 「酔っ払いに手を出してもいいのかよ?」 そう毒づくが、手を出さないのかといわれたら、そういうことでもない。とっとと、酔いを醒まして、美味しくいただくに限るのだ。そういうわけで、アリオスは軽々とアンジェリークを抱き上げた。 「あのね〜。チョコレート食べてね〜。用意したから〜」 楽しそうにアンジェリークが笑って、アリオスに抱きつく。 「気が向いたらな」 「駄目〜。食べてくれないと、無理やりに口に入れるもん!」 「どうやって? 口を開かないと、入らないぜ?」 意地悪く、アリオスが笑うと、アンジェリークは笑顔のままで言った。 「んとねぇ〜。こうするの〜」 そう言うなり、アンジェリークはアリオスに顔を近づけて、その唇をぺろりとなめる。 「……!!」 流石に唖然とするアリオスの唇をアンジェリークは指でなぞりもして。 「ほら、開いた〜」 けらけらと笑うアンジェリークにアリオスは内心でため息をつく。酔っ払いのたわごとだが、煽ったのはアンジェリークである。責任は取ってもらわないと困る。 「わかった、食わせろよ?」 とりあえず、今の状態と酔いがさめた状態の一粒で二度美味しい(ちょっと違うが)展開に持っていくために、色々と算段するアリオスであった。
「ああいうのを馬鹿ップルって言うんだよねぇ……」 そんな2人の様子を見ていたメルがしみじみと呟く。呆れて何もいえないといったところであろうか。 「何か、メルちゃん。一つ嫌な大人になったな……」 そんなメルにチャーリーはそう言って苦笑した。 |
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