Better Sweet


 ほろ苦いビターチョコレートは好きじゃない。ミルクやスイートチョコレートの方がずっと好き。でも、あの人は
そうじゃない……。


「はい、毎度おおきに」
「ありがとうございます、チャーリーさん」
「ええんや。アンジェちゃんの頼みやもんな」
 新宇宙はまだまだ発展途中。アルカディアでの一件後、その住民たちを受け入れたとはいえ、産業も、文化も
まだまだ未発達な部分が多い。そのため、必要な物質は故郷の宇宙から用立ててもらうことが多かった。時々、
こうしてチャーリー自身が届けにやってきてくれる。
「すみません。こんな私事にも……」
「何言うてるんや。女王としてではない、アンジェちゃんにとって一大イベントやろ? 実際、アンジェちゃんたちが
広めることで、こっちの宇宙でも習慣づいて。文化になって。儲けさせてもらってるんやし、お互い様やて」
「ありがとうございます。チョコレートはこちらから届けさせますね」
「ああ。楽しみにしてるわ」
 にこやかな笑顔を残して、去って行くチャーリーにアンジェリークは感謝の気持ちでいっぱいだった。暦に上では
2月。もうすぐ、ヴァレンタインだ。新宇宙もアルカディアの住民が入ってきたことで、賑やかになってきているし、それ
なりに街も出来つつある。もちろん、製菓の材料を扱う店もあるが、アンジェリークが作りたいチョコレートの材料が
どうしても手に入らず、チャーリーに頼みこんだのだ。
「アリオスにはおいしいもの食べてもらいたいもの……」
 ブランデーを効かせたビターチョコレート。いわゆる大人の味、というものだ。どうしても、その味がわからないため、
チャーリーに有名ブランドのチョコを買ってきてもらった。チャーリー自身も好きだといっていた。箱を開けて、一つ口に
運んでみる。
「苦いし、お酒の味もする……」
 ビターチョコレート独自のほろ苦さとブランデーの味にアンジェリークは顔をしかめる。もちろん、まったく苦いだけと
いうわけでもないし、ブランデーとて風味と香りづけ程度のものだ。それでも、アンジェリークには苦手な味だった。
「どうして、大人の男の人は甘いのが駄目なのかしら……」
 もちろん、甘いものが大好きな大人だっていることはわかっている。だけど、アリオスはそうじゃない。チョコレートと
いえば、甘いものの代表選手のようなものだ。それなのに、アリオスは甘いものが好きじゃない。別にチョコレートの
こだわる必要はないとアリオスは言うだろうが、それではアンジェリークの気が収まらない。
「……私、負けないんだから」
 これはある意味勝負だ。負けてなんていられない。大好きな人に自分が作ったものをおいしいといってもらえたら、
何より嬉しいに決まっている。チョコレートの前で、固く自分に誓うアンジェリークであった。



 そして、ヴァレンタイン当日。
「アリオス、もらってね」
「……サンキュ」
 かわいらしくラッピングされたチョコレートを受け取ると、アリオスはその場で開き、中のトリュフを一つつまむ。
「どう?」
「慌てんなよ。まだ、口に入れたとこだぜ?」
 味わってもいないのにと苦笑するアリオスに対して、アンジェリークは必死だ。
「ん。お前にしては、食えるもんじゃねぇの?」
 素直でない言葉。けれど、それは彼にとってはほめ言葉だとわかっているから。アンジェリークは嬉しそうに笑顔を
見せる。
「私、負けなかったわ!」
「何の話だ?」
「内緒!」
 嬉しそうにガッツポーズを見せているので、何か嬉しいことなのだろうと思いつつも、それ以上の追求はあえてしない
ことにしたアリオスであった。

勝気ちゃんは相変わらずです。ああ、書きやすい〜。

|| <Going my Angel> ||