うさみみ

「うう、チャーリー様の馬鹿……」
 ショールをかぶってこそこそとエンジュは聖殿を歩いていく。早くアウローラ号に戻って、今日は一日中引きこもっていなければならない。使命はあるが、今の事情ではどうにもできない。
「おや、レディ……」
「……フランシス様」
 よりによって、今一番あってはまずい人にあってしまったとエンジュは思う。
「どうなさったのですか? そのようにショールをかぶって……。いつもの愛らしいレディの顔が見られないのは……」
「……ごめんなさい」
 瞳を曇らせるフランシスには申し訳ないと思いつつ、エンジュはフランシスの前を立ち去ろうとした。だが、慌てていたのとショールをかぶっていたので、視界が狭くなり、バランスを崩して転びかけてしまった。
「きゃっ!」
「危ない」
 華奢に見えるがしっかりとした男性であるフランシスがとっさに抱きかかえる。…と同時に、エンジュがまとっていたショールがはらりと落ちてしまったのだ。
「あう〜」
「レディ。その姿は……」
 どうか私の元に倒れこんできませんように、と祈りながら、エンジュは瞳を閉じる。だが、いつまで、たってもその瞬間は訪れず、フランシスが自分を表紙しているのを感じる。
「フランシス様?」
「どうなさったのですか、そのお姿は……」
「ああ、これには海より深いわけが……」
 チャーリーの執務室で、特製のお菓子を分けてもらい食べたのだ。だが、手違いで取り寄せたらしいそのお菓子はエンジュの体に思わぬ変化をもたらした。うさぎの耳が生えてしまったのだ。
『ああ、これ。コスプレ用のお菓子やん。悪い、エンジュちゃん!』
 謝られたって、耳が生えてしまったあとでは遅い。一日だけの効果だから、とチャーリーにストールを渡され、それをかぶっていたのだ。
「フランシス様、無理なさらなくていいですよ」
 フランシスのうさぎアレルギーは知っている。気絶しないだけでももうけもの、だ。だが、そんなエンジュに対し、フランシスは優美な笑顔で言った。
「なんて、愛らしいのでしょう……。レディはどんな姿をしていても愛らしい……」
 と、自分の世界に入ってしまっている。
(うさみみは平気なのかしら……。少しずつ、慣れていけば平気なのかしら……?)
 と、エンジュはフランシスの反応を見て考えたのであった。


「あれで、変なプレイに目覚めないといいけど」
「こら、セイラン!」
 通りがかりにその光景を見かけたセイランとヴィクトールの会話であった。

不意に神様が降りてきて、書いた話。セイランとヴィクトールの話は付け足しましたw

<聖地お笑い劇場>