Sweet Honeymoon


 高校三年生になってから、アンジェリークの部屋には夜遅くまで明かりが着くようになっていた。大学受験のための勉強である。
アンジェリークが目指している大学はアリオスが通っていたのと同じ所。かなりの学力を要求されるのだ。

 コンコン。真夜中のこの時間に訪れる人間の心当たりなど一人しかいない。勉強の手を休め、アンジェリークはドアの方を向いて、
声を掛ける。

「なぁに、アリオス?」
「悪い、起こしたか?」
「ううん、勉強していたから」
「なら、入るぜ?」
 アンジェリークの返事も待たず、アリオスが入って来る。いつものことなので、アンジェリークは気にもしない。
「で、どうしたの?」
「日付が変わったからな。朝まで待てなかった」
「何を?」
 判らないと言った顔をするアンジェリークに内心で苦笑する。まぁ、彼自身もこれまでこんな行動にでたのは初めてだから、仕方
ないと思うしかない。

「日付が変わったから、もう今日だろ?」
「え……?」
 とくん、と鼓動が跳ねる。確認するかのようにカレンダーに目をやれば、確かに今日に印が付いている。そこに書かれているのは、
「MY BIRTHDAY」という言葉。

「私の誕生日を覚えててくれたの?」
「おまえが俺のを覚えてるのに、何で俺がおまえのを覚えないと思うんだ? ま、いいけどな。18歳の誕生日、おめでとう」
「ありがとう。嬉しい」
 誰からの言葉よりも嬉しくて、笑顔をこぼすアンジェリーク。その表情が誰よりも愛しく感じる。
「プレゼントに一生分の俺の独占権をやるよ」
「?」
 アリオスから差し出された書類を受け取る。中身は殆ど書かれている。だが、そんなささいなことよりも、重大なのはその書類その
ものだった。

「婚姻届……?」
 アリオスのサインは既に書かれている。後はアンジェリークの分だけだ。
「これ……」
「あとはおまえのサインだけだ。いらなかったら、いつでも捨てろ。けど、サインしたら、すぐに承認のサインをとって、役所に持ってく
からな」

「プロポーズ…なの……?」
「ああ、おまえが高校を卒業するのを待てなくなった。こんな紙切れ一枚に頼るほど、な……」
 手を伸ばして、アンジェリークがつけているネックレスのチェーンを手にとる。ペンダントトップにはアリオスが贈った誓いの指輪。
「これをおまえの指につけて、俺のモンだって言いたいだけなんだけどな」
「馬鹿……」
 その言葉とは裏腹に零れるのは喜びの涙。紆余曲折の末、思いを確かめ合い、本当の二人になった。アンジェリークが高校を
卒業したら、内輪だけで式を挙げようと話していた。けれど、この書類にサインをすれば、法律上でも本当の二人になれるのだ。嬉
しくないはずがない。

「大好き、アリオス……」
 喜びで震える指でそれでも丁寧に自分のサインを入れる。
「馬鹿、俺が先に言う言葉だろ? 神と、おまえに誓う。どんな時にもおまえと幸せになるってな」
「それと、エリスさんにも、ね?」
「ああ……」
 幸せになると、その人の眠る前に誓ったから。
「私も、誓うね……。神様とアリオスとエリスさんと、みんなにも……」
 誓いの言葉のあとには甘い口づけを。そして、アンジェリークの左手の薬指にはプラチナのリングが輝きを上げる。
「二人だけの結婚式ね」
「そうだな……。じゃ、これから、ハネムーンだな」
「きゃっ」
 いきなり抱き上げられて、思わずアリオスにしがみつく。
「ア、アリオス〜?」
「嫌じゃないだろ?」
「馬鹿……」
 真っ赤になって、顔をアリオスの方に押し付ける。それは決して嫌ではない事の証。それに満足げに笑うと、アリオスはアンジェ
リークをベッドまで運んでゆく。


 プレゼントのお返しとハネムーンの夜はこれから始まる……。

  久々に二人です。書いてて、楽しかった〜。ハネムーンは貴方の心の中で…って駄目?


|| < パラレルの部屋 > ||