ひとひらの雪
ふわり。目の前を横切った白いものに、竜は反射的に手を伸ばした。
「どうしたんだ?」
「……いや」
じっと自分の手の平を見詰める竜に、炎も一緒になって手の中を覗き込む。
「何もねーじゃん」
余程面白いものがあると思ったのか、炎はあからさまにがっかりした顔をする。
「あぁ、何か飛んでいたような気がした」
だからつい、掴もうとしてしまったのだ。
「ふ〜ん」
要領を得ない竜の説明に、炎は肩を竦めると、空を見上げた。
「わかった!」
「?」
歓声を上げると、空を指差す炎。釣られて視線を向ける竜の視界に、ひらひらと白いものが舞い散ってくる。
「……雪か」
「そーだ」
それも初雪。
「道理でここんとこ、寒いと思ったぜ」
くすくす。面白そうに笑う炎に、竜も表情を緩ませる。
「そうだ、知ってっか? その年の初雪の一片を手にした奴は、何でも願いが叶うんだってよ」
昔読んだ物語。そういえば、竜にもそんな記憶がある。
「おまえは何を願うんだ?」
興味津々。そう、聞いてくる炎に、ゆっくり首を振る。
「……なんだ?」
「別に……もう叶ってるからいい」
そう言って、ほんのり、笑う竜に、炎は怪訝そうに眉を寄せる。
「それって、どんな願いなんだよ」
竜の願い。何時も無愛想なこいつが何を願うのか。なんて、そんなの知りたいに決まってる。
竜は少し考えるように視線を浮かせると、やがて悪戯っぽく人差し指を口に当てた。
「……秘密だ」
「は? ちょっと、そりゃねーだろ。教えろよ!」
逸らかされて、黙っている炎ではない。騒ぎ立てると竜に詰め寄ってくる。
大事な願い事。
それはたった一つ。他には要らない。
突っ掛かってくる少年を抱き留めると、竜はとびきり幸せそうな笑みを浮かべた。
Fin.
すずちゃんこと、すずはら眠様に戴いたものです。可愛い話でしょう? すずちゃんにはいつも仇を恩で返してもらってるの。
今度また、お礼するからね。