実用重視



  「ハッピーバースデー、竜!」
 十一月七日。炎が竜に差し出したのは紫の封筒になにやら、シールを張られたもの。そこから何が入っているのか
察するのは難しい。
「俺に、か?」
「今、『ハッピーバースデー、竜』って言ったよな?」
 何を言うのか…と言う顔をして、炎はがっくりと肩を落とす。
「開けてもいいか?」
「おう」
 開けてみると、中には図書券が数枚入っていた。
「……これって?」
「見たまんま。実用品で行ってみようかと思って。だって、お前がワーズワースが好きなのは去年で知ったけど、どの
本がいいか、わからなかったし。これでお前が好きな本を買えればって思ったんだよ」
 去年の竜の誕生日は図らずも竜の妹の美奈子と出会い、そのプレゼントを買うと言うお役目を果たしてしまったが、
今年はちゃんと自分の手で渡したかったのだ。
「だからと言って……」
 確かに縁のいうことにも一理はあるのだが、図書券といえどもそれは金券で。お金が見えるというのは竜としては複雑
なのだ。
「あ、金はかかってないぜ? 血はかかったけど」
 竜の言うことを察してか、炎は金がかかっていないことをアピールするが、ますます怪しい。
「…何やった?」
「献血」
「……?」
 予想してなかった答えに竜は絶句する。
「山海駅前の献血ルームで献血すると、お礼にテレホンカードか図書券をくれるんだよ。夏に森に連れてってもらって
……。それから、何回か行ったんだ。だから、お金はかかってない」
「……成る程」
「森がさ、ジュース飲み放題につれてってやるって言うから、着いていったら献血ルームだったわけ。確かに勝手に飲ん
でもいい感じだったけど、飲み放題はなぁ……。あいつは看護婦さん目当てだったから、どうでもよかったみたいだけど」
「やはり、な……」
 容易に想像できるのはやはり彼の人徳なのだろうか。何となく、頭が痛い。
「そういうわけでありがたく受け取れよな!」
「……ああ」
 何となく複雑なものを感じながらも、ありがたく受け取ることにする。ある意味、炎らしいとは思うのだ。
「じゃ、今度、本を買いに行くのに付き合うか?」
「いいのか?」
「使い道くらいは贈ったお前に知る権利はある」
「おう!」
 果たして、この言葉がデートの誘いだと気づいているのか。いや、竜自身が自覚しているのか、いないのか。それは謎
なのであった。

 プレゼントを選ぶとき、どうしても実用重視を考えてしまいます。で、図書券です。献血ルームだと、もらえることがあります。
成分献血だと、一回献血してから2週間したら、又献血できるそうです。私は月に一度だけど。