女王様と首座の守護聖様
「あー、もう、やってらんねぇ!」
 そう、叫ぶと、レオナードはとっとと執務室を後にしてしまった。元々、性格的に机にじっとしていることはレオナードの性に合うはずもなく。執務室を抜け出すこともしばしばである。エトワールであるエンジュがいれば、多少はおとなしくはするが、生憎彼女は拝受されたサクリアの流現に行っている。しかも、聖地から離れた星域であるため、一週間近く会えないのである。
「俺様をちゃんと見張ってない方が悪い」
 エンジュが聞けば呆れ、彼女の相棒はたちまち怒りだしかねないが、当人たちがいないことにはどうしようもない。
「っても、ここには遊べる場所はねえしなぁ……。昼寝しかできねえか……」
 どちらにしても、宮殿を抜け出す必要ためには中庭を通る必要がある。レオナードはそれは堂々と歩くので傍目には執務をサボっているようには見えず、やっかいなものだとヴィクトールが溜め息をついていた。だが、天は彼の味方ではなかったらしい。
「あら……。お散歩かしら?」
「げ…陛下……」
 まずい人物にみつかっものだとレオナードは硬直する。この宇宙を支える至高の存在である。守護聖がそろっていないこの聖獣の宇宙ではその分女王に負担が掛かることになり、女王が出歩くことはほとんどなかったため、油断していたと言えば油断していた。
「いや、その…気分転換によ……」
「じゃあ、私と一緒ね」
 そう言って、彼女は屈託なく笑う。
「いいのか? 体調とか……」
「お気遣いなく。あなたたち守護聖がそろい始めてから、私の負担もかなり減ってきたの。ありがとう」
「礼をいうなら、あいつにだろ?」
「でも、あなたにもよ。守護聖になる運命をあなたが受け入れてくれたからだもの」
「それを言うなら、あんたが女王にならなかったら、俺は存在しなかったはずなんだがな」
 女王と彼女を補佐する女王補佐官は元々は神鳥の宇宙で普通の少女だったと聞いた。
「どうかしら? レイチェルが女王になっていたほうが良かったのかもしれないわ? って、全部結果論だわね。今、やれることを精一杯やらなきゃいけないだけで、振り返ってる暇はないから」
 そう言った彼女の表情はいつもの穏やかなものではなく、まっすぐに未来を見据えている。
(おとなしくて、穏やかなだけじゃねぇってことか……)
 それはそれで面白いと思う。女王補佐官であるレイチェルと親友ということらしいが、丁々発止の関係だったのだろう。
「たいしたオンナだよな、あんたは」
「そうかしら?」
「あんたを相手にする男ってのはたいへんだろうな? 宇宙の意思とやらがライバルってことだろう?」
「あら、それをいうなら、エンジュもよね?」
「……!」
 くすくすと笑う女王にレオナードは一瞬絶句した。
「レイチェルから、エンジュがあなたのことを良く話していると聞いているわ。私の知ってる人に似てるとも聞いたけど。でも、あなたとこうしてお話してると、似てる部分もあるけど、やっぱり違う人ね。エンジュはあなたのことを大要診たいだって言ってたけど、そのとおりだもの」
「俺様をあいつがそう……」
「ええ? 夏の太陽だって」
 そんな風に自分のことを言っていたと言うことを初めて知った。
「私はかまわないと思うわ。太陽にお星様って組み合わせは悪くはないと思うわよ」
「……あんたの思い違いってやつじゃねぇのか?」
 そう毒づいて見せても、彼女はにこやかに笑っていて。
「何だよ?」
「フランシスは月ってイメージよね。お星様に月って言うのも悪くはないけど?」
「何が言いたいんだよ?」
「さぁ? 他人にことだから、よく見えるのかもしれないし?」
 そう言って、くすくす笑う女王に、もしかしたら、レイチェルより厄介なのかもしれないんじゃないかとレオナードは思い、苦笑するしかなかった。

リモとは別の意味で厄介な女王コレットなのですw もちろん、コレット相手にする男はアリオスですよw