Pureness
「ふふふ……」
「……」
ふわふわの金の髪以上に浮かれ気味な少女に闇の守護製、クラヴィスは困惑していた。
『クラヴィス様〜。チョコレートです〜。食べてくださいね〜』
どこかおぼつかない足取りで、執務室に入ってきたアンジェリークはそう言って、クラヴィスに少しばかり不ぞろいな
ラッピングをされた小箱を差し出した。
「私が作ったんです〜。食べてくださいね〜」
ニコニコと満面の笑顔。本人の自覚は皆無だろうが、それは天使の笑顔と呼ばれるもの。誰もが、その笑顔に魅了
される。ライバルである、もう一人の女王候補ですらも。だが、その笑顔にクラヴィスは違和感を覚えた。
「酔っているのか……?」
「やだぁ、クラヴィス様〜。酔ってなんていませんよ〜」
ころころと笑うアンジェリークはどう見たって酔っ払ってるようにしか見えない。どうやら、笑い上戸らしい。
「だって、飲んでませんよ〜。私、未成年ですから〜」
「お前から、ブランデーの香りがするのだがな」
酔っ払ってると気づいた時に、少女と少女の持ってきた小箱から伝わる香りの正体に気づいた。
「飲んでませんってば〜。ただ、味見をちょっとしすぎたかなぁって〜」
「それは飲んでるのと同じだろう……」
確かに飲んではいないが、ブランデーを使ったチョコレートを食べ過ぎたのであれば同じことだ。酔っ払いには理屈は
通用しない。
「少し、頭を冷やした方がいいな……。仕方がない、送ってやろう……」
こういうことをするのは柄ではないが、このまま放っておくわけにも行かない。帰り道に、ジュリアスに見つかれば、厄介だ。
こういう時にリュミエールがいてくれたら、彼に任せられるのだが、あいにく彼は用事で飛空都市を離れていた。
「まったく……」
「どうしたんですか、クラヴィス様〜?」
思わずついてしまったため息に気づいたのが、不思議そうにアンジェリークがクラヴィスを見上げてくる。
「アルコールに弱いのなら、無理に酒を使わずとも……」
「それは駄目です!」
クラヴィスの言葉を遮って、きっぱりとアンジェリークは宣言する。
「だって、クラヴィス様に美味しいチョコレートをあげたかったんだもん。だから、一生懸命、味見をしたんです」
「何故、そこまでにこだわる……」
一生懸命なのはいいことかもしれない。だからと言って、自分の身の丈に合わないことは避けるべきではないのかといい
たいクラヴィスに対し、アンジェリークは譲らなかった。
「だって〜。今日はバレンタインデーですよ〜。知ってるでしょう? 女の子が勇気を出して、好きな人にチョコレートをあげる
日! だから、大好きな人にチョコレートをあげにきたんですよ〜」
ころころと笑って告げる言葉に真実味は半減されそうな気がするけれど、この少女が嘘をつく性格でないことも知っている。
「だから、食べてくださいね」
「……ああ」
果たして、自分の言葉をどれだけ覚えているのか。酔いがさめた時の反応が気になる。
「……その顔ではそのまま寮にも返せない。森の湖にでも行くか?」
「はい!」
嬉しそうにぎゅっとしがみついてくるアンジェリークに微苦笑をもらしつつ、悪い気がしないのも確かで。
「今度は素面のときに……」
「はい〜?」
あどけなく見上げてくる瞳に言いかけた言葉を飲み込む。それは自分から告げるべき言葉、だ。危なっかしい足取りが心配
だからと自分に言い訳を聞かせて、肩を抱き寄せると、天使は満面の笑顔を浮かべた。
久々の女王候補のリモージュです。いや、友人にクラ・リモとはる・うさのどっちがいい?と聞いたら、こっちだったので……。酔っ払い、
最強です。
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