二人の夜
静かな夜の帳の中。月明りだけを光源に青年は腕の中の少女を見つめる。まだ…あどけない少女。華奢で、抱きしめれば、
折れてしまいそうなほど細い……。だが、この少女の中にはしなやかな強さがある。
意志の強い瞳は今は閉ざされている。涙の跡は頬に残されたまま。華奢な身体を壊れそうなほどに抱きしめた。覚え始めた
ばかりに快楽に戸惑い、慣れぬ痛みに涙を流し……。胸が痛まないと言えば、嘘になる。だが…それ以上にこの少女を手に
したことが信じられなくて。確かめたくて…何度も抱きしめた。誰よりも愛しいと…今は言える。ただ一人の存在。
「ん……」
肩が出ていたせいか、少女の身体が寒さに身じろぐ。青年は少女を更に引き寄せ、毛布に包まる。寄せたからだが暖かい。
だが、それ以上に暖かいのは少女の存在。確かに青年の傍に居る。そのことが、心をも暖かくする。
「愛してる…アンジェリーク……」
こうして、この少女を抱きしめることなど…考えてもいなかった。彼女を傷つけ、悲しみの海に落としたのは紛れもなく自分
自身。だが…少女はそれでも、青年に手をさしのべることをやめなかった。
「お休み……」
そうして…青年も眠りにつく。少女の暖かさだけを確かめて。淡いまどろみの中に誘われてゆく。暖かな夢の中に。少女と
ともに……。
ずっと…抱きしめたいと思っていた。こうして…眠りにつきたいと。あなたの腕の中で。ねぇ、笑わない?
大好きな人に抱きしめられるだけで…幸せになれるの。ほかの誰でもなく…あなたの腕の中で。
「ぁ…ん……」
口付けとともに触れられた時には戸惑うことしかできなくて。あなたは困ったような顔をしていた。でも…仕方ないじゃない。
あなたは慣れているけど…私は……。
『ま、そのうち慣れるだろうけどな』
意地悪く笑ってたりして。でも…ね、ちょっと嬉しかったのは。指先から流れるように手の平へのキス。これって…求愛の
キスだったりするの。言葉じゃなくて…こういう仕種で伝えてくれる。何だか、あなたらしくないようで、あなたらしいの。ちょっと
だけ…自分が誇らしく思える。これって…魔法みたい。あなたが私にかけてくれる魔法。不思議。
触れてくる指先。あちこちに口づけてくるあなたの存在。そのたびに戸惑って、震えて。そんな私になんでも優しく口づけて
くれた。あなたの思いのすべてを伝えるように……。
熱くて熱くて。何も考えられなくなってきて。激しい痛みに涙を流して。なだめるようなあなたの口付け。頬を伝う涙を何度も
唇で拭ってくれた。
「愛してる……」
そう告げてくれたのを感じて…私は夢に落ちていった。あなたの腕の中……。
目覚めると、あなたの眼差しがあって。あなたの瞳にちゃんと私が映っているの。優しい瞳。あなたがいるから、こんなに
暖かいの。嬉しいの。私。大好きよ。きっと、どれだけ言葉にしても追いつけないの。でも…ううん、だから、伝えるの。私の
言葉で。
フロッピーディスクの中に眠っていた小説です。懐かしいです。はい……。あまあまは書いてて好きです。
|| <Going my Angel> ||