愛の形


 キッチンの外で手持ち無沙汰にエルヴィンと戯れているジェイドを見つけて、レインは怪訝そうな顔をする。
「何やってんだ?」
「やぁ、レイン。アンジェリークが夕方までキッチンは自分だけで使わせて欲しいって言われて。手伝いが必要なら、すぐに呼んでもらえるようにと、エルヴィンがアンジェリークの邪魔をしないようにお目付け役をしているんだ」
「何やってるんだ、あいつ……」
 キッチンからは甘い香がする。多分、お菓子か何かを作っているのだろうけれど、それならジェイドと一緒に作ることも多い。なのに、ジェイドを追い出して、一人で作っているらしい。
「みゃ〜」
 かまって欲しいのか、甘えるようにエルヴィンが泣き声をあげる。
「お前まで追い出されるなんてな……」
 そう言って、エルヴィンを覗き込むレイン。
「レイン君、女性は何かとこのシーズンは忙しいのですよ」
「ニクス……。忙しいって……?」
「おや、ご存じないんですか? じゃあ、言いません。秘密は楽しいことを彩るスパイスになりますからね」
 ニコニコと言ってのけるニクスにむっとしてしまうが、いつものごとく軽くあしらわれるだけなので、何とかこらえる。
「明日になればわかるよ」
 ポンポンと肩をたたかれて言われても、何のフォローにもなってない気がするレインであった。
「おい、お前たち。そんなところにいては彼女の邪魔になるんじゃないのか?」
 鍛錬に行くのか、通りかかったヒュウガは呆れたように彼らを見ていた。


「皆さん、どうぞ」
 翌日、アンジェリークから渡されたのはそれぞれにラッピングされた小箱だった。
「バレンタインデーですから、頑張りました」
 ニコニコと笑顔でいうアンジェリークからは甘いバニラの香がする。
「へぇ、それぞれに中身が違うんだね?」
「はい。皆様の好みを考えて作ってみたんです」
 ジェイドの言うとおり、それぞれにトリュフだのクッキーだのと中身が違う。共通しているといえば、それぞれに手が込んでいるということだ。
「お気遣いありがとう、マドモアゼル」
「ありがたく戴くとする」
「研究の時に甘いものはありがたいな」
 それぞれの礼の述べ方にも個性が出ていて、アンジェリークはくすくす笑う。
「皆さんのことが大好きだから、頑張りました」
「そうだね、バレンタインデーは大好きな人に思いを伝える日だもんね。俺もアンジェリークが大好きだよ」
 アンジェリークの言葉にあっさりとそんなことを言ってのけるジェイド。…こういうとき、天然はえてして特だとレインは思った。

この四人とエルヴィンがいれば、それでいいって気分になるのは何故ですかねw

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