Mistery


 龍神の神子として少女がが“京”と呼ばれる異世界に召還されて一月あまり。戸惑うことはあっても、若いゆえ、順応性が
高く、すっかりなじんでしまっていた。
 もっとも、それは生活習慣においてであって、鬼や怨霊との戦いには慣れてはいないが。
「わぁ…綺麗……」
 ひらひらと風に舞う桜を見て、うれしそうにはしゃいでいる少女を泰明は冷ややかに見つめている。
「そんなに喜ぶほどのものか?」
「はい! だって、とっても綺麗ですもの。それに、不思議だなぁって、思うし」
「不思議…か?」
 思ってもいない言葉に泰明も一瞬言葉を失う。
「だって。最初は小さな種から始まった命なんですよ。それが、こうやって、何年も生きて毎年こんなに綺麗な花を咲かせて
……。命って、不思議だと思いません?」
 そういって、ぎゅっと桜の木に抱きつく。
「この桜って、どのくらいの時を見てきたのかな……。この先、どのくらいの時を見守っていくのかな……?」
 愛しげに桜を見上げる少女は慈愛に満ち溢れた表情をしている。
「そう考えると、不思議なんです」
 にっこりと答える少女に泰明の方の戸惑いは消せない。
「私にとっては、神子の方が方が不思議だ。異世界の女は皆そうなのか?」
 泰明の言葉に少女はきょとんとする。
「私、不思議ですか?」
「自覚がないのか?」
「はい」
 きっぱりとしたその答えに一瞬、流れる沈黙。少しして、泰明が口を開く。
「やはり、神子は不思議だ」
「やっぱり、ここと私の世界とでは習慣が違うからでしょうか?」
「そうではないと思うのだが」
 うーんと泰明の言葉に首をかしげる少女。
「じゃあ、泰明さん、私のこと持ってよく知ってください」
「神子のことを?」
「私も泰明さんのこと、不思議な人だと思うから、よく知りたいし。不思議だって思うのなら、お互いをよく知らなきゃ」
「そういうものか?」
 よくはわからないが、そういうものなのだろうか…とも思う。確かに疑問に思うのなら、よく知ることが一番だからだ。
 互いを理解しあうことから、始まる関係というのもがある。それを泰明自身が理解できるかどうかは、彼の心しだいなので
ある。

 その後、龍神の神子と泰明の二人が言葉を交わしてゆく姿が時々見かけられたのは、また別の話となる。

れいささんへの差し上げ物。クウガのビデオのお礼だったっけ?