まだ見ぬ人へ
『10年後の私へ。その時には大人の人ですね。まだ見ぬ誰かと出会っていますか? 幸せかどうかはわかり
ませんけれど、私らしくはあるんじゃないですか?』
色あせた便箋には幼い文章が書かれている。まだ見ぬ未来への自分への手紙には、希望だとか、期待だとか、
夢だとか。色々なものが溢れていた。自分の中では過ぎていない時間。けれど、残したこの手紙の中にはそれ
だけの時間が流れている。
聖地からの定期便の中にまぎれていたのは、アンジェリークが故郷の宇宙にいた頃通っていたスモルニィ学園
からの手紙だった。スモルニィ学園は女王を選出されることが多く、その伝で届けられたのだ。中身は中等部を
卒業する時に
書いた、未来の自分への手紙だった。
(そっか、みんな10年たったんだな……)
時の流れの違いを嫌が上でも思い知らされる。アンジェリークにとっては少し前の記憶なのに、同級生たちには
懐かしい思い出なのだ。
『多分、変わらなかったら、頑固で気が強いままなんでしょうね。でも、オトナになったら、少しはましになってる
のかな?
…信じたいんです。でも、つまらないオトナにはならないでね。あ、今から、気をつければいいのかな?』
けれど、手紙の中の文章は幼くて。何だか、別人のようだでくすぐったい。多分、同級生たちもこんなくすぐったい
気分を
味わってるのだろう。
『まだ見ぬ人と出会っていたら、どんな人なんでしょうね? かっこいい人? 優しい人? あ、でも、どんな人でも
出会えてたらいいですね。私が好きになる人だから』
自分の中の時間はあまり過ぎていないようで、大きく変化が訪れている。あの頃夢見ていた、まだ見ぬ大人の自分と
運命の人。片方は何とか手に入れたけれど。大人にはなりきれていない今の自分を自覚はしている。
くすりと笑って、アンジェリークは便箋を取り出した。
『10年後の私へ……』
書き出すのは未来の自分への手紙。今の自分の気持ちと、時間が中途に流れたままで開けた、過去から未来の
自分へあてた手紙の感想を交えて。
まだ見ぬ未来、これから出会うであろう人々。今の自分の気持ちを振り返った時に、誇らしくあることを願って。
まだ見ぬ人に、未来の人に……。
こういう気分もあるということで。
|| <Going my Angel> ||