あなたに出会えて
「ねぇ、アリオスの誕生日はいつなの?」
メルの問い掛けに何故かアリオスは不機嫌そうな顔になる。
「何だよ。チビ、お前にそんなこと関係ないだろ」
「あ、あのね。アリオスにおまじないをしてあげようと思って……」
いつもお世話になってるし…と、言って、はにかむように笑うメル。
「いらねーよ、余計なお世話だ」
「あ……」
切り捨てるようにいうアリオスにメルは顔を曇らせる。
「アリオス、メルちゃんは好意で言うてくれとんやから、そないな言い方せんでも……」
思わずチャーリーが割って入る。
「占い師だっていうのなら、俺の誕生日くらい占えるだろ?」
「アリオス……」
悲しげに瞳を伏せるメルを振り返ることなく、アリオスはすたすたと歩いてゆく。
「なんか、虫の好かんことでもあったんかな……。あんまり気にしなや」
「うん、ありがとう、商人さん……」
それでも、悲しげな顔のままのメルであった。
(ち、あれくらいで、あんな顔してんじゃねぇよ……)
まるで、自分が悪い事をしたような気にさせられる。捨てられた子犬のような顔をするのだから。
(大体、あの連中には緊迫感ってものがないんだからな……)
宇宙の危機を救う旅をしているのにもかかわらず、だ。もっとも、それをもたらせたのは“彼”のなのだけれど。
「アリオス!」
「おまえかよ……」
この宇宙の危機を救うために戦う少女。彼らの緊迫感のなさは彼女にも一因があるかも知れない。お人よしで、旅の途中だと
いうのに、色々なことに首を突っ込んでいるのだし。
「メルさん、落ち込んでいたわよ。もう少し、言い方ってものがあると思うけど?」
「関係ないだろ、おまえには。それに俺は頼んじゃいねぇ」
「そうかもしれないけど……」
アリオスの言い方にアンジェリークは大げさにため息をつく。
「メルさん、アリオスのことがすきなのよ。だから、おまじないをしてあげたかっただけよ?」
「いらねぇよ、別に。大体、誕生日なんてものに何の意味がある?」
「意味って……。誕生日はその人が生まれて日でしょう?」
「その事自体に何の意味がある? 中には生まれる事を望まれなかった命もあるかもしれないし、生まれてこなければ良かった
なんて思ってる命もあるかもしれないぜ?」
「……」
吐き捨てるような口調のアリオスにアンジェリークはいうべき言葉について考える。
「アリオスはそうだったの……?」
「さぁな……」
失言だったかもしれない。こんな事を話すつもりはなかったのに。何度も思っていた。「好きで生まれてきたんじゃない…」と。
「あのね、アリオス……」
背後から、そっとアンジェリークがアリオスを抱きついてくる。
「おい、何だよ……。暑苦しい」
柔らかで温かい腕の中。胸が締め付けられそうな気がする。
「生まれてこなければ良かった人なんて、いないわ……」
「おまえの周りはそんな人種だったかもしれないな……」
少女の周りには光が溢れている。それは少女自身の光であり、周囲の人間もその光に照らされていたのなら。きっと、幸福な
光に溢れていたのだ。
「もし、今でもそう思うんだったら、これだけは覚えてね。貴方の誕生日を大切に思ってる人もいるわ……。私もそう……」
「何が言いたい?」
「だって、アリオスが生まれてきてくれなかったら、アリオスに出会えなかったもの……。私はそう思ってるの。それだけは覚えて
いてね……」
「馬鹿か……」
「そうかも、ね……」
クスリとアンジェリークは笑う。だが、アリオスを抱きしめる手の力を緩めることはないまま。
「離せよ、馬鹿……」
「やだ……」
「勝手にしろ……」
そういいながらも、手を振り解こうとしないのはその腕のぬくもりがあまりにも温かくて。なきたくなるくらいに暖かくて。
「おまえの宇宙になら……」
「え?」
「いや、なんでもない……」
言ってみても仕方のない言葉、だ。だが、今は、今だけはこの腕のぬくもりを感じたい。そう、思わずにはいられないなかった。
アリオスのバースデー創作です。って、微妙に違うんですけど。久々にレクイエム調です。
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