惑いの天使

 にこにこにこ。天真爛漫の笑みとはこういうものを指すのだろうと、心のどこかでジュリアスは思う。
「……これは何ごとなのだ?」
 冷静を保とうとひたすら努力するジュリアスに女王補佐官であるディアも困ったような笑顔を浮かべるしかなくて。
「ルヴァが梅酒をつけたので、漬け込んだ梅の処理に困っていたので、ジャムにしようとおもったのですよ」
「それで?」
「いくつかはお茶請けにとも思って、アンジェリークにだしたら、このような結果で……」
「……」
 困ったような顔をする二人をよそに話題の中心である、金の髪の女王候補、アンジェリークは上機嫌の様子。その頬はほんのりと桜色。明らかに酔っ払っている。泣き上戸ではないのが不幸中の幸いであろうか。
「幾つか食べて見て、私は平気だったので、大丈夫かと思ったのですが……」
「体質によるか……。そなただけを責めるわけにもわけにもいかぬな……」
 厳しいようでいて、光の守護聖、ジュリアスは公平な視点でものを見はする。この場合はアンジェリークが酒に弱い体質であったことも考慮した。
「とりあえず、寮までは私が送り届けよう」
「ええ、お願いします、ジュリアス」
 女王補佐官であるディアにとっては聖地でもっとも信用できる守護聖が送り届けようとしてくれるのは、願ってもないことで。安心して、アンジェリークをジュリアスに任せることにした。
「さぁ、アンジェリーク」
「はぁい、ジュリアス様〜♪」
「……!」
 普段以上にご機嫌な、甘えるような声に内心で動揺するが、それを表に出さないのは流石というべきか。
「うふふ〜♪」
 嬉しそうにジュリアスの手を取るアンジェリークに流石のジュリアスも奇妙な緊張感(ジュリアスだけではあるが)に堪え切れず、問い掛けて見ることにした。
「何が楽しくて、そのように笑う?」
 酔っ払いにこういうことを聞いても詮無いことは分かってはいるけれど、あまりにも状況に困っていたのだ。そんなジュリアスにたいし、にこにこと笑ったままのアンジェリークはあどけなく答える。
「だって〜。ジュリアス様とこうして歩いてるから〜」
 当然のように答えるアンジェリークにやはり、反応に困ったまま、アンジェリークを部屋まで送り届けた。
「今日はもう休むがいい」
「は〜い」
 不安な雰囲気ではあったが、部屋まで送り届ければ大丈夫だろうと、部屋を出ようとしたが、キュッと服のを掴まれて、足を止めざるを得なくなった。
「アンジェリーク……?!」
 今まで以上に戸惑うジュリアスにアンジェリークはふわり、と抱き付いて来た。
「ジュリアス様、大好き♪」
「こ、こら?!」
「怖いけど、ちゃんと私のことを考えてくれてて、ちゃんと適格なことをいってくださるし〜」
 無邪気に告げられる言葉。
「だから、待っててくださいね♪ ジュリアス様に認めてもらえるような立派な女王候補になりますから〜。そうしたら〜わたし……」
 ジュリアスに抱き付いたまま、うとうととまどろみ始めたアンジェリークの背中を優しく撫でて、ジュリアスはその眠りを促す。やがて、腕の中の天使が安らかな寝息を立てたことを確認すると、微苦笑を浮かべた。
「そなたは酔っている。だから、きっと今の言葉も明日の目覚めと共に消えているのだろう……」
 そして、アンジェリークを抱き上げて、ベッドまで運んでやり寝かせてやる。
「ふふ……」
 楽しい夢でも見ているのか、眠りの中でも笑顔。
「その夢の中に私がいればよいのだがな……」
 そう呟いて、あどけない笑顔を浮かべるアンジェリークの頬にジュリアスは口づけた。少しの胸の痛みと限り無い愛しさをこめて……。


なんか、私の中でジュリアスの株が思いっきり上がってるので、つい……。


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