恋はシャッフル
| 時計の針は確実に時間を刻んでいる。何度、時間を確かめただろう。今日だけは時間がすぎるのが遅く感じられる。あと数時間すれば、 日が変わる。あと、十分足らずで日付が変わり、俺の誕生日になる。もっとも、それはどうでもいいことなんだが。たかが、俺の生まれた日、 だ。一つ歳をとるだけなのだから、そんなに騒ぐ必要もない。そう思っていた。 だが、それはあいつにはどうでもいいことではなくて。女王の公務で忙しいはずなのに、女王補佐官殿と何やらコソコソしている。女はそう いうイベント事が好きらしい。俺にはよくわからない。だが、あいつの誕生日なら祝ってやりたい。あいつの喜ぶ顔が見たいから、だ。結局は 同じベクトル…ということか。 俺にはばれないように行動しているらしいが、わからないはずがない。俺はあいつが思っているより、俺はあいつを見ているのだ。あいつの どんな表情もちゃんと見ている。今は秘密を言いたくて仕方なさそうな子供の顔だ。あれだけ顔に出ていて、よくばれないと思っているもんだ。 まぁ、そういうところも可愛いんだが。 厨房に入っては料理長に困られたり、ラッピングのリボンが執務室の机の引出しから、出ていたり。気付かない振りをしながら、笑みがつい 浮かんでしまう。それはすべて俺のための行動なのだ。嬉しくないはずがない。 『あのね、あの子はばれないように頑張ってるんだから、気付かない振りくらいしてあげなさいよ』 有能な補佐官殿のお言葉だ。俺が気付いていることに気付いたらしい。…というより、気付かない方がおかしいのだと思っているのだろう。 気付かれていないと信じているのはあいつだけだ。 時計の針が刻む音。もうすぐ、短針と長針が重なり合う。あと、数回刻むと、明日になる。そして、時計の針の音に隠れ、あいつが忍び足で やってくる。あいつが部屋に入ってきた瞬間の表情を考えただけで、心が浮かれてくる。自分の誕生日がこんなに嬉しいと感じるのは初めて だ。そして、これから毎年……。 あいつが入ってきたら、何を言おうか? いきなり抱きしめて、唇を奪うのもいいのかもしれない。何しろ、俺の誕生日なんだから。多少の 我が侭は許されるだろう。 ほら、今、この瞬間に時計の長針と短針が重なり合う。そして……。 「お誕生日、おめでとう!」 ほら、満面の笑顔を浮かべて、天使が入ってくる……。 |
辛島美登里さんの同名の曲をモチーフにした話。あれは誕生日を祝う女の子の曲なんですけどね。男の立場ならどうかな…とか思って。
|| <Going my Angel> ||