彼女になりたかった日

 見た目はあどけない少女。だが、微笑み一つで守護聖たちを封じこめてしまう金の髪の天使。このアルカディアの地に導かれた
時、彼女は天使の笑顔で道を開いてくれた。大胆で、しなやかなで、柔軟で。アンジェリークにとっては尊敬すべき対象。

 あんな風になりたい…と、思いながらも、けっして彼女にはなれない。彼女にしか出来ないことがあるように、自分にしか出来ない
ことがあるから。それはわかっているけれど。

 だから、だろうか。アリオスとの何度目かの逢瀬で、つい自分の心を話してしまったのは。
「私、陛下に憧れているの……」
 その言葉を言った時、アリオスは戸惑うしかなかった。この目の前の少女も女王なのだ。それなのに、憧れる…と言うことにだ。
「おまえだって、女王だろうが」
 そう言ってしまったのは彼にとっては当然のこと。彼女もまたその背に翼を持つというのに。憧憬を抱くのは当人の勝手だが、
下手にコンプレックスを持つ必要もない。

「でも、ね。陛下って、とても可愛いのよ」
「……おまえな」
 確かに見た目はあどけなく、笑顔も愛らしい感じだ。だが、転生する以前、偽りの姿として旅をしていた時に守護聖たちの言葉の
端々で奔放な一面があるとも聞いている。深く聞こうとしたら、誰もが沈黙に走った事もある。

「おまえがそんな風に思うほど、か?」
「だって……。私、自分で可愛くないのわかってるもん……」
「はぁ?」
 自分で何を言っているのか、わかっていないのだろうかと思わず思ってしまう。どこを導間違ったら、こんなコンプレックスを持って
しまうものなのか。だが、アンジェリークは真剣な表情

「わかってるのよ。自分でも、気が強くて、可愛げがないって……。でも、これが私だし、私が私でなくなっちゃうのは嫌だし……」
「……ガキ」
 クク…と、アリオスが笑い出しても、アンジェリークは暗い瞳のまま。
「アリオスにはわからないわよ……」
 あくまでもアンジェリークは真剣なのだ。あんな風に素直で可愛げがある女の子の方が男の人はいいのかなぁ…と何度思ったこと
だろう。

「あのな……」
 ほうっておくと、自分のコンプレックスの思考に迷いこんでしまいそうな天使にアリオスはため息をつく。
「誰に何を言われたかしらねぇが。おまえは可愛いぜ」
「お世辞はいらない……」
「なんで俺がおまえにお世辞を言う必要がある。俺がおまえを可愛いって思ってるんだから、それでいいんだろ? おまえはおまえで
しかないんだからな」

 自分で可愛くない…そう思い込んでる少女が可愛くて、愛しくて仕方ない。自分の魅力に何も気づいていないのだろう。
「おまえは可愛いぜ。気の強いとこも、食い意地が張ってるとこも、おてんばが過ぎるとこも。それを全部含めて、おまえは可愛いんだ。
少なくとも俺はそう思ってる。おまえがおまえであるところが、一番可愛い」

 チュッと頬に口づけて。
「そういうおまえを可愛いとおもう男は俺一人で十分だ」
「ん……」
 コクリ…と頷く。ずっと、誰かに言ってもらいたかった言葉。心が少しだけ軽くなる。
「ありがとう、アリオス」
「バーカ」
 ツン…と額をつつくと、拗ねた顔で見上げてくる。そんな表情もまた愛らしいことを自覚していないことにアリオスは内心で苦笑する。
彼女の魅力をわかるのは自分だけでいいのだ。

「バーカ」
 もう一度、そう告げると、不意打ちのように天使に口づける。唇が離れた直後の天使の戸惑ったような真っ赤な顔はやはりアリオス
だけの知る可愛らしさであった。

 トロワ創作です。ラブチャットの「陛下に憧れてるの」発言が妙にツボで〜。リモージュにコンプレックス持ってるコレットを一度で
いいから書いてみたかったの〜

|| <Going my Angel> ||