シンデレラのリボン
エトワールに選ばれたエンジュの毎日は忙しい。
聖獣の宇宙と神鳥の宇宙の守護聖からによるサクリアの拝受に始まり、そのサクリアをサクリアを必要とする惑星に惑星への移動、サクリアの流現、守護聖がそろうまでの間は守護聖になってもらうための説得……。一年と期間は短い。そのためか、エンジュはぱたぱたと走り回っている姿がよく見掛けられる。「廊下は走るものではない」とジュリアスが注意をしたことはあるが、『急いでるんで、すみません!』と天然で無視した形になったこともある。そのエピソードにより、エンジュは一部の守護聖たちから喝采を浴び、大物扱いされたことは言うまでもない。
そんなわけで、エンジュは今日も聖獣の宇宙の聖地を走り回っていた。
「えーと、今日は炎のサクリアと地のサクリアを拝受して、その足で流現に行って……」
石盤の精霊、タンタンが取られている現在、変わりに用意されたサクリアの拝受を受けるブレスレットはすぐに壊れてしまう。そのため、こまめにサクリアを拝受して流現しなければならず、今まで以上に、エンジュは走り回っていた。急いでいる時の人間の視野はかなり狭くなっている。当然、周囲がみえていない状況で。勢い良く走っているその状態には危険が生じる。そして、事件は起こった。
エンジュが通り過ぎるはずだった守護聖の執務室の扉が突然開いたのだ。
「きゃあ?!」
「!」
「す、すみません!」
結果は出て来た人物と派手にぶつかってしまった。ぶつかった反動で尻餅をついてしまうかと覚悟したエンジュは衝撃に備えて反射的に瞳を閉じる。だが、思ったような衝撃は襲っては来ず、強く腕を掴まれていることに気付いた。
「……?」
恐る恐るエンジュが瞳を開くと困ったような顔をして自分を見つめる人物と瞳。
「レオナード様……」
「エンジュちゃんよ、廊下は走ると危ないんだがな……」
「ごめんなさい……」
「ごめんなさいで済むなら守護聖はいらねえぜ?」
からかうようにそう言って、レオナードはエンジュの腕を離してやった。
「お前がお役目で頭がいっぱいなのは分かるけどよ」
「あう〜」
指摘されるとますます固まってしまう。
「なんて、な。相手が俺様でよかったと思えよ。あの勢いだったら、ナヨナヨした連中は骨折しかねねえからな……」
それは誰を指すのだろうかと気にならないではなかったが、深くは追及しないことにする。
「ま、無理はすんなよ」
そう言って、レオナードの大きな手がエンジュの頭を撫でると、エンジュはくすぐったそうに笑った。
「はい!」
「いい返事だな」
「じゃあ、レオナード様。失礼しますね」
少しだけ、スピードを緩めて、走り去るエンジュを、レオナードは苦笑混じりで見送る。
「人の話をちゃんと聞けよ……」
スピードを緩めている時点で自覚があることはあるのだろうけれど。怪我だけはするなよ、と届かぬ背中に向かってレオナードはつぶやいた。
「あ……」
不意にヒラヒラした感覚のものが肌に触れるのを感じて、そこに視線を向けると、胸元の金具に赤くて細い紐のようなものが引っ掛かっていた。
「あいつのリボンか……」
エンジュのおさげ髪を形作るもっとも重要なアイテムである。ぶつかった時には互いに気付いてなかったようだ。レオナードはリボンを丁寧に金具から外した。
「ありゃ、指摘されるまでは気付かないだろうな……。ち、しょうがねえな、届けてやるか……」
口調とは裏腹に、レオナードのその表情にはどこか愛しさが籠っていた。
ちょっとしたあまあま。レオエンバージョンと府らエンバージョンを考えていて。コレはレオエンバージョン。こういうのもありかなぁ…と。
続きは読みたい人がいらっしゃれば。…私にレオエンを求めてる人がいるかどうか……。
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