カスタード味
ふんわりとしたその外見の中には飛び切り甘いカスタードクリーム。
「美味しい〜」
ぱくりと一口食べて、アンジェリークは飛び切り幸せな表情になる。
「お前、食欲がないって言ってなかったか?」
「……お肉とかご飯とかはね。でも、ほら。シュークリームってクリームだし。シュー皮だって固くはないし」
「……どういう理屈だ」
気が強いように見えて、アンジェリークは結構繊細である。ストレスもためることもしばしばで。胃痛になったり、
食欲がなくなることもある。それを最初知ったときは心配したのだが、今、こうやって目の前でシュークリームに
ぱくついている様子を見ていると、舐められているとしか思えない。
「アルカディアに美味しいケーキ屋さんがあるって知ってよかった〜」
「そればっかり食ってんじゃねえだろうな」
「…後はヨーグルトとか。スープとか? ルヴァ様に教えていただいたお豆腐のお味噌汁は美味しかったな」
「流し込み系ばっかかよ……」
「後ね、エルンストさんがお勧めの栄養剤と栄養ドリンクを差し入れてくれたの。後はほら。ゼリー系の栄養食品
とか」
「それはかなり間違ってないか?」
流し込み系の食品はまだいい。だが、エルンストの勧めたものは人間としてどうかと思われる。
「だって、食べたいと思えたのがこれよ? まずはそこからだと思うの。栄養は栄養剤から取れるんだし。多少
不足したってしにはしないわよ」
「太るぞ」
「ちゃんとカロリー表示見てるもん」
「そういう問題かよ」
確かに何も食べられないよりは食べられるものがあるのはそれでいいとは思うのだが。
「大体、そのクリームをフライパンに入れて熱してみろ。ほとんどが油だろ?」
「……それは言っちゃいけないのよ!」
びしっと指差すその表情は意外なほどに凛々しいけれど。方向性が間違っていると思うのは気のせいだろうか。
「ったく……」
結局、そんなところもいとおしいと思っている自分がいて。どうしようもないとは思うのだけれども。
「アリオス?」
キョトンと首をかしげてのぞきこんでくるあどけない表情。もう、勝てるはずがない。
「ね、どうし……」
チュッ、と、軽い音と引き換えにアンジェリークの言葉は封じられる。
「あ、アリオス〜?」
「やっぱ、甘いな……」
カスタードクリームもこういう形で味わうのなら、悪くはない。そんな気がする。
「ま。とにかく、ちゃんとまともなもんも食えるようになれよ。そしたら、俺が何か作ってやるから」
「え、本当?!」
途端に治る機嫌に苦笑するしかない。けれど、これもまた彼女らしいと言えば彼女らしいし、アリオス自身も気に
入っている。
(ま、いいけどな……)
気を取り直し、残りのシュークリームにぱくついているアンジェリークに苦笑しつつ、アリオスは今の時間を楽し
んでいた。
90000番を踏まれたるるにゃん様からのリクエスト「馬鹿っプルで甘い話」です。胃が痛いときでも、甘いものは食えるのは
不思議ですね。(食うな)いや、アンジェって、結構ストレスたまってそうじゃないですか……。
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