no more
「頑張って」
それはあなたにしかできないことだから…と。アンジェリークがそれを言われたのはこれで三度目だ。
最初は女王試験の時。次は故郷の宇宙が危機に陥った時。そして、今はこのアルカディアを育成すること。
「頑張って」
それはアンジェリークを気遣い、励ますための言葉。判ってはいる。けれど、言われなくても、いつだって精一杯頑張って
いる。どのくらい頑張れば、いいのだろう。
(私の努力が足りないから……?)
溜息をつく。気遣いがとても痛くて、重くて。それでも笑顔でそれに答える自分がとても偽善者めいているように感じられた。
いつもの時間にいつもの場所。アリオスとすごす時間はアンジェリークにとって何よりの大切な時間だった。
「ちゃんと寝てるか? あんまり顔色が良くないぜ」
「な、何でもないの」
こんな迷いを知られたら、軽蔑されてしまうかも知れない。笑顔でごまかそうとするアンジェリークの頭をそっと大きな手が
撫でてきた。
「あまり頑張らなくてもいいんだぜ」
「え……?」
戸惑うより先に、抱き締められる。伝わる温もりはアリオスが今ここにいることの何よりの証。
「<頑張れ>なんて、無責任な言葉を間に受けてんじゃねえよ」
「無責任って、そんな……」
「毎日、目一杯に駆け回ってるおまえは過ぎるくらいだ。それ以上頑張り過ぎると、重いだろう」
「アリオス……」
どうして? といった表情でアンジェリークは振り返る。誰にも知られないように笑顔で封じてきたはずなのに。
「馬鹿。おまえの下手な芝居なんざ俺には通じないんだよ」
言葉とは裏腹にその口調も声もとても優しい。大きな手が優しく栗色の髪を梳く。たったそれだけのことがアンジェリークの
心に染みとおる。アンジェリークはすとん、とアリオスの肩に顔を伏せる。
「駄目だよ、私は女王だもの。甘えちゃいけない。私も頑張ってるけど、皆様も頑張ってるから。重い、とは思う。そこで頑張る
のが私だもの」
そう告げて、アンジェリークは顔を上げる。
「でも、アリオスの前では私、女王でない私でいたいから……。アリオスには甘えてもいい?」
「馬鹿……」
ツン、と頭をつつく。
「他の奴には見せんじゃねえぞ」
「うん……」
アリオスの腕の中におとなしく収まるアンジェリーク。判ってくれる人がいる。それで十分だ。もう少しだけ頑張れる、そう思
えるから……。
52000番を踏まれたなちゅ様からのリクエストです。「精神的に疲れているアンジェを甘やかせるアリオス」です。
ちゃんとアンジェは甘えてます。頑張ってるのに、頑張って、と言う言葉は時に残酷でもあります。それを理解して
くれるアリオスを書きたかったのです。
< 贈り物の部屋 >