Stars

「あれ、あいつらは?」
 金の髪の女王の命で、新宇宙を訪れた鋼の守護聖ゼフェルは栗色の髪の女王と銀の髪の剣士の 姿がない
ことに首を傾げる。そんな彼に女王補佐官であるレイチェルはあっさりと答えた。

「ああ、クリスマスラブラブデートですよ」
「いいのか?」
 思わず絶句。
「あのコ、いつも頑張ってるし。その分、ダンナに頑張ってもらいましたけど」
 ニィーッコリと笑うレイチェル。その笑顔にゼフェルは背筋が凍り付いた。
「それより、陛下のケーキを見せて下さいよ! 楽しみにしてたんですから」
「お、おぅ」
 そう、これがゼフェルのお使いであった。新宇宙の鉱物のサンプルをもらうという条件つきで はあるが。そうで
なければ、素直に彼が来るはずはない。

「きゃあ、おいしそう! アンジェと食べます〜」
 手作りのブッシュドノエル。
「あいつの分はいいのか……」
「どうせ、酒の方が良いって言うに決まってますもん」
 甘い物は嫌いなはずだから、貰っても仕方ない…というのだ。
「いや、そんなには甘くしてねぇはずだぜ。あれくらいなら、食えるだろ?」
「食べたんですか?」
「試食にかなり付き合わされたからな……」
 思い出しただけでも、地獄だったと思う。甘い者が苦手なゼフェルにも食べられる甘さなら、 食べられるはず
だから、と。散々つき合わされたのだ。

「ゼフェル様たちもラブラブなんですね……」
「な、何がだよ!」
 途端に真っ赤になるゼフェルにレイチェルは面白そうな眼差しをむける。
「だって〜。付き合ってあげたんでしょ? 絶対、命令とかを聞く人じゃありませんものね〜」
 キャハハ…と笑うレイチェルに、ゼフェルは運搬係をマルセルに押し付けるべきだったと痛感 したのであった。


 一方、話のネタになっている張本人たちはというと……。
「小さい頃の話なんだけどね、デパートに大きなツリーが飾ってあったの。そのてっぺんのお星 様が欲しかったの」
 そう言って、アンジェリークは街の広場に飾られたクリスマスツリーを見上げる。小宇宙と なったアルカディアは
独自の進化を遂げている。今日は二人で視察と称して、訪れていた。

「あんなもんが、か?」
 たかが、もみの樹の飾りにどうしてそこまでこだわるのか。
「アリオスはクリスマスは嫌い? ワクワクしない?」
 キョトン、とアンジェリークは首を傾げる。
「そういうもんには縁がなかったからな」
 聖なる救いの御子の誕生を祝うというこの慣習はかつての彼の故郷にはなかった。
「神様にお祈りを捧げたりもしなかったの?」
 その言葉にアリオスは唖然とする。自分の存在の価値を時々この少女は忘れている気がする。 宇宙を愛し、導く
女王は神に等しき存在だというのに。

「おまえ……」
「何?」
「いや、何でもない……」
 言いかけた言葉を飲み込んで苦笑する。確かに神に近しき存在だ。だが、アリオスが愛するのは 神のように完全
でも、万能でも、残酷でもない、ただ一人の少女なのだ。アリオスの前では普通に

笑ったり、起こったり、泣いたり、喜んだり。他の誰よりも自分を選ぶといってくれた存在。
「あの星はやれないから、これをやるよ」
「?」
 アリオスが指差したのは露天のアクセサリー屋。ガラス製の星の形のイアリング。店主に金を 渡して、アンジェ
リークの手の中へ。

「ありがとう、アリオス」
 嬉しそうに笑うアンジェリーク。
「つけてやるよ」
 片方を手にして、アリオスはアンジェリークの耳に触れると、アンジェリークは反射的に目を
閉じる。まずは一つ目をアンジェリークの耳に。
「もう片方もつけるぜ?」
「うん……」
 けれど、いつまで経ってもイアリングの冷たい感触は来ない。代わりに……。
「ん……」
 どこまでも暖かくて、柔らかな唇が重なる。鐘の音を遠くに感じながら、二人は口づけを交し 合う。
「メリークリスマス、アリオス……」
「ああ……。メリークリスマス、アンジェ……」
 祈りを捧げるのなら、この天使のためだけに。そんな日なのかもしれない、などと考えながら、 アリオスは愛しい
天使を抱きしめた。

 


49000番を踏まれたのあ様からのリクエストです。トロワ以降のクリスマスな二人ですが、アンジェの世界観で
クリスマスは難しいですね……。

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