記憶の影
血に染まった紅い道。それは無数の命。そして、俺自身の血。それは俺が通った足跡すらも消してしまうほどに。それでも足り
ないかのように、俺の心はまだ血を流しつづけている。もう…流すものすらないはずなのにな。
痛みすらも、もう麻痺しちまってる。いや、最初から、感じていなかった。感じる必要なんざ、ないだろう? これは正当なる代償
だ。俺の大事なものを奪った連中への……。
俺はもう、こういう生き方しか出来ない。この血塗られた手だ。後戻りできるはずがない。一度、回り始めた歯車は壊れるまで
動くしかないんだ。そういう運命だってことだ。仕方ないだろう? そういう生き方しか知らないんだから。
他に生きる術など、誰が俺に教えてくれたっていうんだ。唯一、教えてくれようとした女は一人ですべてを抱え込んで、逝って
しまった。
ああ、そうだ。すべてはそこから始まった。
なのに、動き出した歯車って言うのは皮肉なもんだ。お前に巡り合っちまうなんて…な。
宇宙を導く聖なる存在。そんな肩書きの割には屈託なく笑い、泣いて、怒る。それでいて、不思議な存在感。最初に近づいた
時は利用する為の存在だったってのに……。どんな事があっても、諦めようとはしない。運命に立ち向かおうとする。俺が今まで
知らなかった強さを持つ女。それがお前だった。
バカな女だと思ったさ。だましていた男をそれでも信じようとするなんて…な。何度も否定しようとした俺にお前は微笑んですら
見せた。それは慈悲とか、同情とかそんな簡単で、底の浅い言葉ではなくて。お前だけが持つ魂の輝きだった。
「何があっても、あなたを、あなただけを選ぶわ」
迷うことなく告げられた言葉。宇宙を守る、至高の存在。それがお前だ。その手は大いなる宇宙を、そして、限りない可能性と
未来を紡ぐ大切な手を。こんな男の手を取る事に使おうとして。穏やかでいて、激しい想い。そして、俺の闇を消そうとするかの
ようにまっすぐに投げられる瞳の強さ。それがお前、なんだ。
負けた…と思った。俺は今まで何をしてきたのか。もしも、お前にもっと早く……。いや、それは言い訳に過ぎない。歯車のかみ
合わせで出会った俺たちなのだから。
だから、俺はお前の前から消える事を選んだ。この手はあまりにも汚れすぎていて。俺が歩いてきた道は、血の紅で染まり
すぎていて。どうして、お前の手を取れる? 俺なんかのために涙を流すな。ただ、お前の信じる道を歩いて欲しい。それは俺の
エゴに過ぎないとわかっている。散々、お前を傷つけてきた男の…な。結局は愚かで弱い男でしかなかった。おまえのように、
強くはいられない。
それでも、お前は手を差し伸べる事をやめないんだな。なら…お前の光で俺を導いてくれ。後戻りの出来ない生き方しか出来
なかった男だ。だが、お前が未来を示してくれるのならば、俺はもう一度、扉を開けてみようと思うから。生きること…への扉を。
今度はきっと……。
アリオス限定キリ番14142番を踏まれたゆきねこさまからのリクエストです。「EINS・VIER」と言うバンドの同名の曲からイメージを…と
言う事でしたが。すみません。イメージを崩す事しか出来ない私です。あうあう……。
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