In your eyes
灯を点けない広間の中で、青年は独り玉座に座り、グラスを手にしている。グラスの中で琥珀がゆらめく。
(まるで…我の心だな……)
ゆらり、ゆらり。所在なげに琥珀がゆらめく。そのたびに、彼の心の中はざわめく。彼の心を捕えた、栗色の 髪の
天使が頭から離れない。
(あの娘が見ているのは…我ではない……)
少女の持つロッドの宝石の秘密を解くために、偽りの姿で近づいた。疑うことを知らないかのように、少女は 彼を
仲間にした。いや、正確には『偽り』の姿の彼だ。
『アリオス』
無邪気に少女は笑う。別の宇宙の女王とは思えぬほどのあどけなさ。年相応の少女の顔を色とりどりにくる くると、
見せてくれる。もっとも、これは『偽り』の彼に対してだけだ。ほかの仲間たちの前では決して、そんな 顔を見せよう
ともしない。
『だって…女王候補の頃からそう接していたから。今更、変えられないの。でも、アリオスは最初から、私を “アンジェ
リーク”として見てくれるから』
胸が痛んだ。かつて愛した少女と面影を重ねていた自分に対しての自己嫌悪。そして、いつしか、彼女の いう通り、
少女を“アンジェリーク”として見ている自分に気づいていたから。
『アリオス』
少女の瞳の中に映るのは旅の剣士である“アリオス”だ。無邪気に笑う天使の笑顔は決して、金銀妖瞳の 闇をまとう
自分ではないのだ。
(何だ…この感情は……)
苦々しい何かが胸の中に広がってゆく。それは嫉妬。少女の瞳に映るのは偽りの姿。偽りの姿といえ、 自分自身に
変わりはない。変わりはないはずなのだ。
その苦しさを忘れるかのように、グラスの中の琥珀を一気にあおってしまう。だが…それでも、酔えることは なく。虚
しさだけが広がっていった。
鮮やかすぎる満月の夜。突如出現した敵である皇帝の姿に誰もが驚きの表情を見せている。仲間であったはずの
青年が皇帝であったことに対して。その中に栗色の髪の天使がいる。信じられないといった表情でその 瞳に青年を映し
出している。
「我の名はレヴィアス・ラグナ・アルヴィース、『正当なる者』。おまえたちの知っているアリオスはもうどこにも いない」
告げられる言葉に誰もが目を見開く。闇を凌駕する漆黒のイメージ。その中で唯一輝く金銀妖瞳。その姿を 確かに
少女はその瞳に映している。
(そう…その瞳に我を映せ。偽りの姿でなく…本当の……。それが憎しみでも…怒りでも……。我を… 我だけを……)
今、少女の瞳は確かに本当の彼を映していて。彼がどれだけ満足しているのか、少女は知らない。ただ… 目の前の
現実に呆然としている。それでも、いいと彼は思った。少女の瞳に自分だけが映し出されている。
それが彼の心を満たしているのだから……。
テーマは偽りの姿であるに“アリオス”対する嫉妬。これも一種の三角関係ですよね。まぁ、アンジェにとっちゃそんなこと
どうでもいいのに、彼はそのことに囚われている。続きは書けるかなぁ。難しいね、この人。
|| <Going my Angel> ||