In a morning

 小鳥の泣く声と射しこんでくる朝日に誘われて,炎は瞳を開ける。しばらくはボーっとして いたが、不意にベッド傍を
見まわす。一緒に寝ていたはずの相手がいない。もっとも、これは
よくあることで。生活の為のバイトや妹の世話で
忙しい相手なのだから、仕方ない。炎は納得

している。だから、2人でいる時間は大事にしたい。
「もっかい、寝よ…」
 呟いて、毛布に包まろうとすると、
「何をやっている…」
と、かかってくる声。利きなれた無愛想な声である。
「竜…?」
 まだ目覚めきっていない瞳に、竜は苦笑する。自分がいることに驚かれているようだ。
「今日はバイトが休みで、美奈子も泊りがけで遊びに行ってるから、一緒にいられると言った
はずだが」
「そうだっけ…?」
 どうやら、本当に覚えていないらしい。もっとも、睦言の最中の会話だったのだ。されて いる方に覚えていろというのが
無理なのかもしれない。熱に浮かされている最中なのだから。

「まぁ、いい。とにかく下に降りて来い。朝食が出来ている」
「ん…」
 竜の言葉に頷いて、炎はもそもそと着替え始める。本人は寝ぼけていて気づいていないが、 その身体には昨夜、竜が
散らした紅い花があちこちに咲き乱れている。

「おなか空いた…」
「前言撤回。シャワーが先だ」
「う〜」
 すねた顔をするのは本人の自覚はともかくとても可愛い。だが、甘やかせるつもりは全く ない。
「ほら、タオル」
 本人よりも勝手を知っている竜はバスタオルを投げつける。炎はしぶしぶ立ちあがって、 部屋を降りてゆく。しばらく
すると,風呂場から、シャワーの音が聞こえてくる。それを
確認すると、竜は朝食を暖めなおすのであった。

 シャワーを浴びて、キッチンに炎が来た時にはちゃんと朝食がテーブルに並んでいた。 卵焼きにお味噌汁とお漬物。
海苔に白いご飯。ごくごくシンプルなもの。

「いただきます」
 シンプルなメニューでも一人で食べるコンビニ弁当やファーストフードよりはずっと 美味しい。
「美味い…」
「そうか。おかわりはあるぞ」
「うん」
 頷いて美味しそうに食べる炎。こうやって、食べてくれる分には作った甲斐がある。 竜も自分のペースで食事をする
のであった。


 食事を追えると、二人で後片付け。水の冷たい感覚が心地いい。
「今日はどうするんだ?」
「何がだ?」
「だって、今日は1日一緒にいられるんだろ? 何しよう」
 ゲーセンに行くのもいいし、裏山で過ごすのもいいかもしれない。
「別に…」
「別にって、どうでもいいのかよ」
 途端に不機嫌にになる炎に、竜は強引に唇を奪う。
「ん〜!」
 身じろいで,身体を離す炎。潤んだ瞳で竜をにらむが、それがかえって竜を楽しませる ことなんて、気づいていない。
思わず微かな笑みをこぼした竜にますます機嫌を悪くする。
これ以上、怒らせると、不利になると悟った竜は自分から
折れてやることにする。

「すまない、俺が悪かった。だが、俺はお前と2人でいるのなら、それでいい。それでは 不満か?」
「エ…」
 ストレートなその言葉に今度は赤面してしまう。何て言ったらいいのかわからなくなる。
「り、竜…」
 今度は優しく竜の唇が降りてくる。何となく逆らえなくて。結局は受け入れてしまう。
「まだ時間はある。ゆっくり考えるのも悪くない」
「ん…」
 2人で考えている間も2人だけの時間。2人でいられるのなら、本当は何処だっていい のだ。それは炎にしても、竜に
しても同じこと。二人で過ごせるのなら、その日1日は
とても大切な日になるのだから。゜
「とりあえず、炎」
「何?」
 「キスしようか…」
 その言葉と共に近づいてくる竜の瞳に自分が映っているのを確認すると、ゆっくりと 炎は瞳を閉じる。
 これからのことはとりあえず。今は一つのキスから始めよう…と。1日はまだ長いの だから……。

部屋の整理してたら、この手書き原稿が見つかって、懐かしさのあまりの狭した。コピー本持ってる人、いるのかなぁ…。