How to use
「誕生日おめでとう、ダンナさん」
慇懃無礼にラッピングした箱を差し出す才色兼備の女王補佐官にアリオスは持っていた書類をわざと、パサリと音を立てて、
机に置く。この宇宙を司る女王である栗色の髪の天子を巡る二人の確執はなかなかのものである。
「まさかお祝いのお言葉をいただけるとは思っていなかったな」
「まぁ、そんな。また一つお年を召されたんですからね、やっぱり、お祝いしないと。陛下がどうしてもお祝いをすると言って聞か
ないし」
『また一つ』を強調する辺り、イイ性格をしているとアリオスは思う。実際、一回りは離れているのだ。レイチェルにして見れば、
大事な親友の心を奪った憎い相手であるのだからこれくらいは許されるはずと信じて疑っていない。
「まぁ、受け取らないと、アンジェが悲しむしな。もらっておいてやるぜ」
「ええ…お気に召してくださると嬉しいですわ」
空気が凍り付いている。外をとおる女官たちはこの部屋から流れるブリザードに恐れをなし、遠回りするものまでいる。誰かが
言ったのか、『怪獣大戦争』だの、『聖地大決戦』だのとは……。
「……で、レイチェルに何をもらったの?」
執務が終わったあと、二人でささやかな(アンジェリークはレイチェルも交えたかったらしいが、その前に色々とアリオスに行動
されたらしい)お祝いをして、今は就寝前の穏やかな時間。このまま、眠れば…であるが(爆笑)
「いや、まだ開けてはいないんだが……」
何が入っているかわかったものではない…と言うのが、本音。まぁ、そんなことを言うとアンジェリークが悲しむので、言葉には
しないが。大切な恋人と親友には仲良くして欲しい…と言うささやかな天使の願いなのである。
「開けてみたら? レイチェルって、すごくセンスがいいんだし」
言葉の裏に、何を送ったのか見たいという好奇心が見え隠れしていて。アリオスは苦笑市ながらも、ラッピングのリボンを解き、
包装紙を取る。箱の中に入っていたのは……。
「おいおい……」
思わず、引きそうになる。箱の中にはパステルカラーのパジャマ。ブルーを基調としてて、ポケットの部分には白のアクセント。
いわゆる可愛い系のパジャマである。
「ええ、可愛い♪」
「マジかよ……」
同封されていたカードには『たまにはこんなパジャマで穏やかな夢でも……』と。彼が絶対嫌がるであろうことを想定したとしか
思えない。
「着てみて。似合うかも」
傍らの天使は無邪気に笑っている。他意があるとは考えもつかないらしい。
「今…にか?」
可愛い系のパジャマを着ている自分を想像して、一瞬思考が硬直する。
「だって、これから寝るんだし。寝るときに着ないで、いつ着るのよ」
「……」
何気ないアンジェリークの言葉。だが、ふと、あることを思いつく。
「そうだな」
「あ、アリオス?」
唇の端を上げる笑いかた。悪戯を思いついた時の彼の表情。何となく、嫌な予感がして、後ずさる。
「なんだよ」
それを許さず、腕の中に引き寄せられてしまう。
「えっと…着替えるんじゃないの?」
「ああ、そうだな。だが、着替えるんなら、服を脱がないとな」
「う、うん」
「どうせ、脱ぐなら、楽しんでからの方がいいよな」
「ちょ、ちょっと〜」
簡単にお姫様抱っこを去れて、ベッドに連れて行かれる。じたばた暴れても、敵うはずもない。
「そういうわけだ」
「何がそう言うわけなの〜」
それ以上の抗議の声はアリオスの唇にのみ込まれてしまう。そして、いつもどおりの夜は過ぎて行った(爆笑)
「……」
「どうした?」
不機嫌そうな顔で見上げる翡翠の瞳にアリオスは楽しそう似笑みを浮かべて見つめ返す。
「どうして…こういう着方になるわけ?」
「お前の方が似合いそうだからな」
「ダブダブなのに……」
事が終わって、眠りに落ちて。目が覚めたアンジェリークが身に纏っていたのはアリオスのパジャマの上衣。アリオスはズボン
だけを身に纏っている。
「そういうほうがそそられるんだよ」
さりげなくとんでもないことを言われ、アンジェリークはぶんぶんと首を振る。
「そそりたくない」
「遠慮するなって。それに、誕生日くらい、俺の自由にさせろ」
そう言いきってしまうと、再び少女の唇をふさいで、抵抗させなくしてしまう。
こうして、パジャマはしっかりと活用されたのであった。そのことを知ったレイチェルの反応はまた、別の話となる。
新婚さんのパジャマの着方…、基本ですね。うう、こんなの書くの、私ぐらいだった……。しくしく……。
|| <Going my Angel> ||