正しくないチョコレートの味わい方
キッチンに広がる甘いチョコレートの香り。所々でリキュール類のいい香りもする。
「これでよし!」
満足そうにアンジェリークは笑顔を見せる。出来上がったチョコレートを一つ一つは来に詰めて、後はラッピング
だけの状態。
「多分、美味しいって思ってもらえるよね……」
一番最後に型に入れた、まだ固まっていないチョコレートに視線を移す。試行錯誤を繰り返して、漸く彼好みの
味になったと思う。
(美味しいって言ってくれるといいなぁ……)
どんな風に受け取ってくれるだろうか、考えるだけでドキドキして、ウキウキする。
「何、二やけてんだ?」
「あ、アリオス!」
突然入って来たアリオスにアンジェリークの声はひっくり返る。まさか、アリオスのことを考えていたなんて言える
はずもなくて。
「な、何でもないわ」
「何だよ、変な奴だな」
そう言いながらも、唇の端が少し上がっている。何か楽しいものを見つけた時のアリオスの笑い方。
「で、できたのか?」
「ええ。頑張ったのよ」
ニッコリと笑顔で、アンジェリークはバレンタインデー合わせのチョコレート指し示す。
「けっこうまともそうじゃねえか」
「ひどい、頑張ったのに〜」
「俺の分は、だろ?」
「〜」
鮮やか過ぎる笑顔にどう答えろと言うのか。真っ赤になってしまうしかない。
「ま、俺としてはこれでもいいんだぜ」
そう言って、アリオスはボウルの中に残っているまだ柔らかなチョコレートを指ですくう。
「?」
その意図を図りかねて、アンジェリークは小首を傾げる。次にはその指が唇に入れられてしまった。
「ん〜」
突然の行為に、思わず歯を立てそうになる。だが、アリオスの指であることを考えて、舌で押し戻そうとした。すると、
チョコレートの味が口の中に広がった。
「そのまま、味わってみろよ。自分の作品の味だろ?」
「ん……」
言われるままに、差し込まれた指に舌を搦め、舐め取って行く。アリオスに喜んでもらおうと、ブランデーを効かせた
オトナの味。味見はもちろんしたけれど、こんな風に味わわさせられるなんて、考えてもいない。
「ん、ふ……」
指を抜き取る瞬間に見せた煽情的な瞳。何の無自覚であるにも関わらずに、だ。
「アンジェリーク……」
そっと、名前を呼んで、アリオスはアンジェリークに口づけた。
「ん……」
柔らかな舌がアンジェリークの口内を動き回る。無意識に逃げようとする舌を搦め捕り、歯列を一つ一つ味わうかの
ように、深く口づけられる。貧られてゆくようなガクガクとアンジェリークの足は震え、力を失っていった。
「あ……」
「おっと、危ねぇな……」
唇が離れると、ズルズルと力を失い、崩れ落ちそうになった身体をアリオスが片手で支えた。
「うまかったぜ?」
「馬鹿……!」
からかいを含んだその笑顔にアンジェリークは真っ赤になって、アリオスを睨みあげる。が、それもまたアリオスを
楽しませるスパイスにしかならない。
「馬鹿で結構。まだ、味わわせてもらうぜ」
そう告げると、指ですくったチョコレートを今度は首筋に塗る。
「や……」
身じろいで、逃れようとするアンジェリークを押さえ、チョコレートを舐めとるために舌を這わせる。そのついでとばかり
に、耳朶にまで伸びてゆく。
「は、ぁ……」
甘い声が零れだすと、アリオスは満足げに笑みを浮かべた。
ハラリ、とエプロンのリボンが解かれ、ブラウスのボタンが外され、胸の砦は簡単に陥落させられた。
「やぁ……」
胸の蕾にもチョコレートが塗られ、執拗に舐めとられる。そして……。
「きゃぁ!」
「ここだと、すぐに溶けちまうな」
クチュリ、と淫らな水音が響く。
「い、いや……」
「嫌じゃねえだろ?」
溢れ出す蜜ごと舐めとられる。
「こんなに溶けるくらい、熱くなってんだぜ?」
中に入り込んだ指が執拗に掻き乱す。
「や、も、駄目……」
震える指で、アンジェリークは救いを求めるようにアリオスの服の裾を掴む。その様子に満足そうに笑みを漏らすと、
アリオスはアンジェリークの身体を壁に押し付け、そのまま貫いた
「あ、ぁ……」
いつも以上に深く入り込んで来るアリオス自身にアンジェリークは息を呑む。
「ん、はぁ!」
揺さぶられ、身体の隅々まで掻き乱される。キッチンでこんなことをしている、ということが感覚をより鋭くしていて。
「いつもより、燃えるか」
「や、」
意地悪に耳元に囁かれるその声にすら、身体は反応する。何もかもを狂わされる。
「や、あ!」
アリオスがより一層の激しさでアンジェリークを貫いた瞬間、アンジェリークの身体が大きくしなり、壊れた人形のように
力を失う。ぼんやりとした意識の中、自分の中に熱い何かが解放されたことに、アンジェリークは身を震わせた。
「もう知らない!」
その後、シャワーを浴びさせられ(その時もいいようにされたらしい)、着替えさせられたアンジェリークは機嫌悪そうに
アリオスを睨み付ける。
「俺は試食しただけだぜ?」
悪びれることもなくアリオスはアンジェリークを見つめる。
「どっちもうまかったぜ」
「馬鹿!」
悔しさと恥ずかしさに、思わずアンジェリークが投げ付けたクッションをアリオスは楽しそうに受け止めた。
再録ですが、まぁ、なんと言うか……。