本来の趣旨



   二月の半ばのこの日は一喜一憂する男女の姿が見られる日。お菓子業界の陰謀と称されたり、
本来の主旨とは違った意味で日本に根付いた習慣であっても、大切な日には変わりない。
「美奈子から渡された」
「サンキュー。よろしくいっといてくれな」
 竜に渡された小さな紙バッグを炎は受け取る。美奈子からのバレンタインの贈り物だ。もうすぐ退院
できるとはいえ、外出は難しく。板チョコに手書きのイラストが架かれたカードが添えられていた。可愛い
子犬の絵だ。飼い始めたばかりの子犬の写真を持って行ったことから、だ。
「ホワイトデーには何がいいかな? 美奈子ちゃんが喜びそうなものがいいし、何がいい?」
「気を使わなくてもいい。美奈子もそう思ってる」
「いい子だよなぁ」
 しみじみと炎は呟く。けれど、お返しは喜んでもらいたい。竜の妹とは思えない程、素直でいい子、だ。
まぁ、素直な竜なんて考えもつかないが。
「元々、バレンタインはチョコレートを送る日じゃないからな」
「え、そうなのか?」
 すっかり日本に根差している習慣だ。意外に感じてしまう。
「カードの交換だとか、そういうものらしい」
「でも、それじゃ、コンビニの季節商品には弱いよなぁ……」
 論点が擦れているが、竜のバイトのことを心配したらしい。竜のバイトしているコンビニももちろんチョコ
レートを置いているのだ。
「でも、カードだったら、いいかもな」
 もちろん、男同士だから、気恥ずかしくて、チョコレートを渡しあったりはしないけれど。
「やめておけ。期待は出来ないしな」
「どういう意味だよ」
 ムッとした顔になる炎に竜は掠めるような口づけをする。
「だから、これでいい」
 そう告げて、笑う竜を炎は照れ臭さと悔しさに真っ赤になるしかなかった。

 ヴァレンタイン創作です。久々の二人がこれ……。いや、恋人達が愛を確かめる日、というのにちなんでみようと思って、
 玉砕しました。ごめんなさい……。