一切れの心遣い

 アリオスと久々に映画を見に行こうという話になった。前売りはアリオスが会社で安くで手に入れてくれた。上映時間は午後二時前。
「じゃあ、お昼御飯食べてから見に行こうよ」
「ああ、そうだな」
「じゃあ、待ち合わせは正午ね。遅れないでね」
「おまえこそ」
「遅れないもん!」
 そう電話でやりとりした数日後の日曜日。外は気温も穏やかでデート日よりである。
「先に席を取っとくか」
 駅から五分歩いたところにあるシネコンで席の予約をしてから、外にでる。シネコンの中にあるのはファーストフードだけなので、それはちょっと避けたい。
「アリオス、ここは? 映画の券持ってたら、10パーセントオフだって」
 アンジェリークが見つけたのはハンバーグ専門店だった。アリオスたちが席を取ったシネコンの映画のチケットもしくはチケットの半券があれば10パーセントオフと書いてある。
「そうだな。おまえ、食うしな」
「自分の分は自分で払うもん!」
 揶揄するようにいうと、ぷいとすねてしまう。こういうところが可愛いと思うけれど、アンジェリークにいわせると子供扱いされているとさらに拗ねてしまう。年齢差であるから仕方ないし、別の意味で大人扱いすると、セクハラ呼ばわりされる。解せぬ…と言いたいが大人だから、言わない。少しからかうだけで済ませるあたり、大人だと自分で信じて疑わないのだから、アリオスもどうしようもない大人である。
「えっと、何にしようかなぁ……」
 ハンバーグ専門店だけあって、ハンバーグのメニューも様々ある。
「俺はソーセージとベーコンを添えたのにする。これでビールがあれば最高だけどな」
「もう……。お昼から飲まないの! 私はこのセットでいいや」
「それで足りるのか?」
「……足りると信じてる」
 アンジェリークが頼んだものはハンバーグにサラダとパンとスープという、まぁ通常のセットである。アリオスが注文したものはそれにさらにベーコンステーキとソーセージ2本が添えられたものでボリュームはあるが、アンジェリークが食べられない量ではない。
「だって、お値段が……」
「出してやるって……」
「ダメ。年下だからって、おごってもらってばかりじゃダメなの!」
 アンジェリークにしてみれば、精一杯のプライドである。それを笑うことはアリオスにはできない。
「ご立派だな」
「……表向きはね。それに、カロリー高そうだから、その、ね……」
 そして何ともかわいらしい乙女心である。厚切りベーコンのステーキとソーセージは確かにカロリーは高そうだ。アリオス的にはもう少し肉づいてもいいとは思うが、乙女心を逆上させても意味がない。
「まぁ、いいけどな……」
 とりあえずは食事が来るまでは互いの何気ない会話を楽しむのであった。
「お待たせしました〜」
 運ばれてきたハンバーグはアリオスのものは大きめのソーセージに、想った以上の厚切りのベーコンステーキが添えられていた。
「わぁ、おいしそう……」
 ちょっと、後悔した感じのアンジェリークにアリオスはプッと笑い、ベーコンを切り分け、ソーセージとともにアンジェリークの皿に載せてやる。
「アリオス?」
「ちょっと、このボリュームは多いからな。手伝え」
「あ、うん」
 嬉しそうに笑うアンジェリーク。おいしそうに食べる姿にアリオスも満足げに目を細める。
(俺も結構単純だな……)
 だが、それでもいいのかもしれないとも考え、アリオスも食事に手を着けた。

映画を見る前に入ったハンバーグのお店で食べたランチのベーコンステーキが分厚くて〜。ハウルのベーコン…と呟いたことから、
何となく浮かんだ話。友人がありこれ読みたい〜といわれたので、ようやく書いたのです。すまん、こんなので……。