温かな腕の中で
| 暖かくて、優しい。いつまでもそれに包まれていた感覚。両親や姉に抱きしめられるのとは、違う。泣きたいほどに切なくて、愛しいというのだろうか。 「あ……」 それを確かめようと、瞳を開ければ、自分を抱きしめて眠る綺麗な顔が目に入る。カーテンの隙間からはまだ月光が差し込んできているから、まだ夜のはず。自分の部屋とは違う天井、大きなベッド。何も身にまとっていない自分と恋人の姿から、いやでも状況が頭に入ってしまう。 (そ、そうだ。あたし……) カァーッと頬が瞬時に染まる。依織とこうして夜を過ごすのは初めてではないにしろ、こんな風に目が覚めることはなかった。いつも、目が覚めたら、優しいまなざしが自分を見つめていて。目覚めたばかりの頭はだんだんとクリアになり、状況を把握したとたんに真っ赤になって、シーツをかぶるのが常だったから。 (依織くん寝てるんだ……) 考えてみれば、こんな風に依織の寝顔なんて見ることはなかった。眠りが浅いと言っていたし、朝も早くに起きてくる。そんな彼がこうして寝顔を見せてくれている。それがなんだか面はゆい。そっと、手を伸ばして頬にふれてみても、目覚める気配を見せない。 (あたしと寝てるからだったら、嬉しいな……) こうして寝顔を見せてくれるのは、自分に甘えてくれていると言うことだから。安らいでくれていると言うことだから。自分が依織のそう言う存在になれるというのはとても嬉しい。 「いい夢を見てね」 起こさないように気を遣いながら、身じろいで。依織の唇にそっと自分のそれを重ねた。それだけのことがひどく満たされた気分をむぎにもたらした。自分に口づける依織もこんな気分なのだろうか? そんなことを考えて、むぎは眠ろうとそっと依織に寄り添った。 「お姫さまはそれで満足なのかな?」 「え?!」 その声に反射的に顔を上げると、くすくすと笑う依織の姿があった。 「い、いつから起きていたの?」 「お姫さまの優しい手が心地よくて、まどろんでいたら、目覚めのキス、を受けたしね」 「う〜」 つまりは頬にふれたときのことなのだろう。 「ご、ごめん」 「どうして、謝るの?」 「寝ていたところを起こしちゃったから……」 キスしたことを知られていることは恥ずかしいけれど、依織の眠りを妨げてしまったことへの申し訳のなさが勝る。 「気にしなくても構わないのに……」 「だって……」 依織は構わないと言うけれど、眠りを妨げてしまったのはやはり申し訳ない気がするのだ。 「君こそ、珍しいね。まだ、夜も明けていないのに……」 「ん〜。なんか、目が覚めちゃったからさ」 「だったら尚更だよ。お姫さまは起きていて、僕だけが夢の中だなんて。いつでも、共にありたいと願っているのに」 「あ、ありがとう……」 甘く囁かれた言葉にむぎは真っ赤になってシーツを頭から被ろうとしたが、やんわりと依織はそれを制する。 「依織くん?」 「せっかく二人で目覚めたのだから、ただ眠るだけじゃ勿体なくはないかい?」 それはそれは艶やかに依織は笑って言った。 「も、もったいないって?」 もしかしなくても、かなり嫌な予感がする。どうするべきかと考えている間にも、依織の手がむぎの顔の両脇につかれて。 「目が覚めてしまった夜の時間の過ごし方は、言わなくてもわかるだろう?」 「え……」 むぎがそれ以上の言葉を発する前に、依織の唇に全て飲み込まれてしまう。重なって口づけはすぐに深いものに変わって。反射的に逃げようとする舌は簡単に依織のそれに捕まって、深く絡まされて。それはむぎの身体から抵抗の力が失われるまで続けられた。 「ふ、ぅ……」 ぐったりと力の抜けたむぎの身体に手を滑らせると、ビクンと身体がはねる。 「や、もぅ、寝ようよ……」 「もう遅いよ? どうせなら、ぐっすりと眠ったほうがいいだろう?」 何がどうせなのか…と反論する唇は再び依織に塞がれ、柔らかなふくらみを大きな手が包み込む。やわらかさを堪能するかのように触れられているうちに、その先端が硬くなり。指で挟まれ、つままれると、むぎの背が大きく跳ねた。 「どうする? やめる?」 唇を話して、そう囁きかけると鳴きそうな声でむぎは依織にしがみつく。 「意地悪……」 普段は元気で気が強いしっかりものの印象を持つむぎの甘えるようなしぐさ。依織しか知らないその甘い声に唇の端を上げて、笑みを浮かべた。 「お姫さまの望むまま、に……」 力の入らない足の間に身体を滑り込ませて。潤い始めた泉にそっと指を差し込めば、抑えることのできない声があふれ出し。それに依織の中の熱も煽られていく。 「あっ…も、……」 「うん、僕もほしい……」 ぎゅっとしがみついてきたむぎの中に自分の中の熱を埋め込んでいく。熱い泉は依織を待ちわびていて、深く取り込もうとする。より深くつながって、互いを求め合う口付けを交わして。一つに溶け合ってゆく……。 「あぁ、っ……!」 限界を訴えるむぎにより深く繋がるために腰を穿ちつけて。そして、自分の中の熱を迸らせる。 「ん――!!」 むぎもまた上り詰めて。ぼんやりと視線を彷徨わせて。そんなむぎに覆いかぶさる。その重さはむぎには心地よい重みとなった。 流石に疲れたのが、ぐったりと眠りに落ちたむぎを依織は穏やかな瞳で見つめる。 「お休み、いい夢を……」 彼女の腕の中で眠るむぎを抱きしめて、依織もまた眠りに落ちる。彼女の暖かさにまた眠りに落ちる。この暖かさが依織に安らかな眠りをもたらすのだ、と実感しながら……。 |
…ごめんなさい。ある意味、安眠妨害ですよね、いおりんw
<Back>