ハニーリップ

「唇が荒れてるんなら、蜂蜜を塗るとよいですよ」
 そう無邪気に告げるのは、私をこの聖地に導いた小さな大きな流星。執務室を訪れた彼女にお茶を出した時に、いただきもののティーハニーを添えたら、そんなことを言い始めた。
「蜂蜜…ですか?」
「あ、リップクリームがあれば、それでいいとは思うんですけどね。我が家はそうだったんです。口内炎にも効くんですよ」
 いわゆる生活の知恵というものなのでしょうね、とは思う。けれど、誘われているように感じるのは、私の気のせい? いや、気のせいなのだ。目の前の小さなレディは私がそれまで幾度も仕掛けられた甘くて爛れた愚かしい男女間の睦みなどを知るはずがないのだろうから。
「口づけをかわすと、甘くなりそうですね」
「本当に甘いキスになりますね」
 私の甘い誘いなど、気づいてはいないようだ。それがまた愛しいと思うのは…愛のなせる業でしょうか?

2005年10月ののWeb拍手より再録。やばいよ、この人……。

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