あなたが喜ぶもの


お誕生日おめでとうございます、アリオスさん!」
 その言葉と共に差し出された箱にアリオスは言葉を失いかけた。
「何だよ、これは……」
「プレゼントです♪」
 にっこりとエンジュは笑う。目の前に差し出された箱はかなり大きい。
「色々考えて、これにしたんです」
「かさばるものは置き場に困るんだが……」
 いつも、聖地にいられるような立場でもない。部屋には余計なものはなるべくは置きたくないのだ、
「平気ですよ〜。消耗品も多いですから〜」
 にこにこと笑顔。どうあがいても、受け取らせる気が満々らしい。
「何が入ってんだ……?」
 とりあえずは中を確認しようとすると、エンジュは慌ててそれを制した。
「あ、駄目です〜。陛下と一緒の時に開けてください」
「はぁ?」
 わけがわからない。もらってしまったら、それをどうしようとするのも、アリオスの勝手なはずだ。だが、エンジュは真剣な眼差しで言った
「陛下が一緒じゃないと、意味がないんです! いいですか? 陛下が一緒の時にですよ!」
「あ、あぁ……」
 あまりにもの迫力に、思わずアリオスは承諾してしまった。
「じゃあ、私はこれで失礼します」
 一仕事を終えて、満足とばかりの笑顔で、エンジュはその場から立ち去る。機嫌がよいのか、軽快なスキップまでして。
「何なんだ、あれは……」
 エンジュから送られたプレゼントを手にしつつ、アリオスは呆然とその後ろ姿を見送った。


 そして、数時間後の女王の私室。アリオスの好物であるラムのシチューをメインにした、アンジェリークの手作りの夕食を終え、くつろいだ時間を過ごしていた。
「で、これがエンジュからのプレゼント?」
 そのプレゼントを巡る聖天使と魔天使のやりとりを聞いたアンジェリークは笑いを堪えるのに必死なようだ。
「ああ。お前が開けてくれ」
 少しばかり憮然としているアリオスにアンジェリークはクスクス笑って、プレゼントの箱を開けてみた。
「わぁ……!」
「ちょっと待て……」
 思わず、アンジェリークは歓声をあげ、アリオスは顔をしかめた。箱の中には色々な種類のお菓子とお茶の葉が入っていた。
「あー、これ、カフェ・オランジュのテイクアウト用のパウンドケーキ♪ カンセールで売ってるクッキー♪」
 きらきらした瞳でアンジェリークが箱の中身を見聞してゆくと、中にはカードが入っていた。
「エンジュからアリオスにみたい……」
「何なんだ……」
 アンジェリークからカードを受け取ると、アリオスはカードに目を通し、プッと吹き出した。
「やられたな……」
「え、何か書いてたの?」
 問いかけるアンジェリークにアリオスはカードを差し出した。アンジェリークがその中に目を通すと……。
『色々考えましたが、やっぱりアリオスさんには陛下の笑顔が一番の宝物だと思います。アリオスさんといる時の陛下はとても幸せそうですが、甘いものがあると幸せが増えると思います。だから、これで沢山の陛下の笑顔を見てください』
 鮮やかな文字で書かれた言葉にアンジェリークもしてやられた気分になる。
「いいのかしら、私ばかりが得してる気分」
 アリオスの誕生日なのにね、とクスクス笑う。
「いいんじゃねえの? 下手なものよりはずっといいしな」
「でも、アリオスがもらえたのは、私の笑顔だけよ?」
「その分、お前自身からもらえばいい話だろ?」
 そう言って、かすめるような口づけをアンジェリークに送る。
「もう……」
 楽しそうに笑うアリオスに困ったような振りをしながら、アンジェリークはアリオスに身を委ねた。



ある意味、レイチェルより理解が深いかもしれない、エンジュって……。で、アンジェはお菓子を食べられて役得。
アリオスはそのままアンジェを食べて、満足。w

|| <Going my Angel> ||