天使の降る夜
真っ白な粉雪が空から舞い降りてくる。それはさながら、天使の羽のようで。窓からそれを見ていたアンジェリークはほうっと
ため息をつく。
「どうした、アンジェリーク」
「うん。ホワイトクリスマスになりそうだなって思って」
「女はそんなのが好きだよな」
「だって、ロマンチックだもの。それに、好きな人と、アリオスと過ごせるクリスマスなんだから……」
最後の言葉は小さくなっていたけれど。アリオスが聞き逃すはずもなくて。
「バーカ」
「馬鹿だもん」
からかう言葉に途端に拗ねてしまうその表情が可愛くて。つい、からかってしまうのは彼の悪い癖。
「そんな馬鹿を愛してくれてるのはアリオスじゃない」
最近はこんな反撃を覚えてきた。だが、青年の方が1枚上手で。
「じゃあ、お前はどうなんだ?」
「きゃあ」
グイッと、強引に引き寄せられ、腕の中に閉じ込められて。間近に迫った顔で問い詰められれば、陥落するしかない。
「私も…愛してる……」
「上出来」
心底楽しそうに笑っている。いつまでたっても、年上のこの恋人に敵わない自分がとても悔しい。
「また、子供扱いする……」
「じゃあ、オトナの扱いしてやろうか」
「やん!」
スッと背中の弱い部分をなで上げられて、アンジェリークが悲鳴を上げる。借れとそういう関係に名ってまだ日が浅くて。どう
対応すれば良いのか、未だにわからない。
「意地悪……」
「惚れたオンナを手にするためなら、オトコってのはいくらでもずるくなれるんだぜ?」
「どう言う理屈よ……」
そう呟いて、アンジェリークは自分の髪を結わえていたリボンをほどく。そして、それを自分の手首に結びつける。次にワン
ピースのリボンをほどいて、アリオスの手首に。
「何のつもりだ?」
怪訝そうに自分のリボンとアンジェリークのそれを見比べるアリオス。アンジェリークは真摯な瞳でアリオスを見つめる。
「アリオスの全部を私にくれるなら、私の全部をアリオスにあげる。いつまでも、私ばっかり翻弄されてるなんて、ずるいわ」
「……」
「馬鹿にするかもしれないけど、私は真剣なんだから」
「馬鹿にしてねぇよ。圧倒されただけだ」
そう、時々、こちらが予想もしていない事をこの恋人は簡単にやってくれる。振り回されているのは本当はアリオス自身なの
かもしれない。
「俺は、高いぜ?」
「私だって、そうだわ」
「一生分かかっても良いんだな」
「当然」
互いに見詰め合って。それはある意味戦い。そして、一緒に笑い合う。
シュル…リボンがほどけるおと。まずはアンジェリーク。そして、アリオスのリボン。
「一生分のクリスマスプレゼントだからな。大事にしないと…な」
「そういいながら、この手は何よ」
自分の弱いところをまさぐり始める手に、身を捩るアンジェリーク。
「大事にするために、愛でてるんだ」
「やぁ……」
それ以上の言葉はアリオスの唇に飲み込まれて。夜が更けてゆく。静かに雪が降る夜は熱い時間とともに過ぎていった。
「メリークリスマス」
目覚めて、互いに告げ合うその言葉に微笑を交し合う。誰よりも幸せな表情で。そして、二人の薬指にきらめくリングは。
朝の光に反射する雪のように、きらめいていた。
クリスマス創作です。はい、馬鹿ップルです。良いじゃない。二人が幸せなんですから。
|| <Going my Angel> ||